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「派閥指示」暴露に波紋 安倍派裏金 「票目当てでは」の声


「派閥指示」暴露に波紋 安倍派裏金 「票目当てでは」の声 国会内で取材に応じる宮沢博行衆院議員=13日
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 総務相と防衛副大臣を事実上更迭された鈴木淳司、宮沢博行両衆院議員の告白が注目を集めている。自民党安倍派のパーティー券収入の還流分を政治資金収支報告書に記載しなかったと自ら説明し、宮沢氏に至っては「派閥に指示された」とまで暴露。一部では「説明責任を果たした」と称賛や激励の声が上がっているというが、専門家は「有権者の心証を良くするための計算だろう」と、票目当てとの冷めた見方を示している。 (1面に関連)
 「派閥から『記載しなくていい』という指示がございました」。宮沢氏は13日、国会内で報道陣に対し自ら裏金の存在を語り始めた。
 140万円の還流を受け、交際費や関係のある団体の年会費に使ったと説明。パーティー券収入を「国民の皆さんからいただいた大事な浄財、ご厚志」と表現し、「今後は厳正に管理する」と決意表明までした。
 松野博一前官房長官や高木毅国対委員長ら実力者「5人組」は捜査が始まっていることを理由に具体的な説明を拒否している。麗沢大の川上和久教授(政治心理学)は、宮沢氏は2021年の前回衆院選で比例復活しており、地盤が強固な5人とは事情が異なると指摘する。
 「安倍派全体に疑惑の目が向けられる中、当落線上にいる議員ほど動揺は激しい」とし、宮沢氏の行動を「派閥でいち早く声を上げることで有権者にアピールできると踏んだのではないか」と分析する。宮沢氏の関係者によると、静岡県磐田市の地元事務所には15日にかけて激励や称賛の電話が相次ぎ、ホームページにも50件前後の書き込みがあったという。
 60万円の還流を受けたと15日に明らかにした鈴木氏は、就任からわずか3カ月での辞任となった。5年間で1千万円超の還流を受けたとされる松野氏らより少額なため、川上教授は「『この程度で辞めさせられたの?』と同情する有権者もいるはず」と話す。
 東京地検特捜部は近く安倍派側への強制捜査に乗り出す方針で、議員本人も事情聴取を受けるとみられる。相次ぐ告白には立件のリスクを減らす思惑もあると、川上教授はみている。