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20%台連続「危険水域」/パー券裏金疑惑が直撃


20%台連続「危険水域」/パー券裏金疑惑が直撃 岸田内閣支持率の推移
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

内閣支持率最低
 岸田内閣の支持率が共同通信世論調査で20%台に沈んだ。2回連続で、自民党の政党支持率も2012年12月の政権復帰後、初めて20%台となる「危険水域」に突入。安倍派の政治資金パーティー裏金疑惑の直撃をまともに食らい、果たして政権の立て直しは可能なのか―。岸田文雄首相は焦りを募らせる。 (1面に関連)

針のむしろ
 「歴史的節目にふさわしい、充実した議論を行った」
 17日午後、首相の姿は東京都内のホテルにあった。日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の首脳らによる特別首脳会議を終えた後の記者発表で、日本とASEANの交流開始50周年の意義を強調した。
 外相経験が長く「外交の岸田」を自負する首相。だが自らを取り巻く国内の政治情勢は「針のむしろ」(閣僚経験者)と言わざるを得ない。裏金疑惑への世論の非難はやまず、内閣支持率は22・3%。3カ月連続で過去最低を更新したからだ。
 自民党支持層の「見限り」(ベテラン議員)も顕在化。自民支持層のうち岸田内閣を支持したのは48・4%と半数を割った。自民の政権復帰以降の最低は21年9月、菅義偉前首相の退陣表明直後の49・5%だが、これを下回った。「支持する政党はない」とした無党派層に至っては6・1%の支持しか得られなかった。自民筋は「裏金疑惑への対応を誤ると、もっと落ちる。人事での『安倍派切り』で終わりではない」と危機感をあらわにする。

青木の方程式
 自民には、かつて「参院のドン」と呼ばれた故青木幹雄元参院議員会長が唱えた「方程式」が語り継がれている。内閣と自民の支持率の合計が50%を割り込めば政権は持たない―という一種の物差しだ。
 今回、自民の支持率は26・0%で、内閣支持率と合わせると「48・3%」。中堅は「青木の方程式が現実となってしまった」と嘆く。
 しかし首相サイドに事態打開に向けた妙案はない。減税を盛り込んだ経済対策は不評で政権浮揚につながらず、前回調査で内閣支持率は28・3%に下落した。そこへ裏金疑惑が追い打ちをかける。「外交も含めた政策の方向性は間違っていないが、今は何をやっても裏金疑惑にかき消される」。自民幹部はうめく。
 対する野党。「岸田内閣は国民の信頼を失っている」(立憲民主党の泉健太代表)、「首相の指導力に多くの国民が疑問を持っている」(日本維新の会の藤田文武幹事長)と批判のトーンを強める。来年1月召集の通常国会では裏金疑惑を徹底追及する構えで、政府、与党が守勢に立たされるのは必至だ。
 政権として今後どう対処すべきか―。公明党の山口那津男代表は指摘する。「自民党が自ら疑惑のうみを出し切り、国民が納得する再発防止策を明確に打ち出さないと駄目だ」

政治不信の解消急務

 岸田内閣の支持率が過去最低を更新した共同通信社の全国世論調査の結果は、国民の政治への怒りが増幅している現状をストレートに映し出した。自民党安倍派による巨額の裏金づくりの背景に何があったのか。一体、何に使われたのか。国民が納得できる説明が欠かせない。政治不信解消が急務だ。
 疑惑発覚後、松野博一前官房長官ら渦中の安倍派幹部は一様に「答えは差し控える」といった答弁に終始した。説明責任を果たそうとしない後ろ向きな姿勢は問題だと言わざるを得ない。
 自民は党支持率が2012年12月の政権復帰後最低に落ち込んだことも深刻に受け止めるべきだ。自民に「自浄能力がある」との回答は「ある程度ある」を合わせ20・9%にとどまった。
 国民の信頼回復へ「火の玉」となって取り組むとアピールした岸田文雄首相。現時点の対応は、派閥パーティーの当面自粛の指示など弥縫(びほう)策にとどまっている。思い切った党再生策を打ち出さなければ、国民の離反は止まらない。

 ▽調査の方法=全国の有権者を対象に16、17両日、コンピューターで無作為に発生させた番号に電話をかけるRDD(ランダム・デジット・ダイヤリング)法で実施した。実際に有権者がいる世帯にかかったのは460件、うち414人から回答を得た。携帯電話は、電話がかかったのは2275件、うち614人から回答を得た。