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裏金「会食や選挙」に使用/ノルマに備えプールも  


裏金「会食や選挙」に使用/ノルマに備えプールも   裏金の流れ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

規正法違反事件 
 自民党安倍派の政治資金規正法違反事件は、裏金の使途が焦点となる。多くの秘書らは、選挙応援の費用や秘書給与に消えていると証言。パーティー券の販売ノルマに備えて手元にプールしたほか、高級料亭での会食に使用したとの声もある。「政治には金がかかる」を金科玉条にした最大派閥の長年の「闇」。全容解明へ東京地検特捜部は安倍派幹部の聴取要請に踏み切った。 (1面に関連)

自由な金
 「何を言ってもマスコミに切り取られる」
 21日、聴取対象とされる安倍派幹部は、国会内で記者団に囲まれると口を閉ざした。日々の取材攻勢と、ひたひたと迫る捜査。焦りと動揺を隠せない様子は明らかだ。
 特捜部が照準を定めるのは、派閥が議員側にキックバック(還流)した裏金の使い道。政治活動に使ったのか。私的な活動に費やしたのか。悪質性を問う上で議員本人への確認は欠かせない。
 ある安倍派の副大臣経験者は「私設秘書の給与など事務所の運営費と、選挙の費用に充当した」と明かす。
 自身の選挙で実動部隊となる地方議員の応援に事務所スタッフを派遣すると、宿泊費や交通費が発生する。急な衆院解散ともなれば、選挙事務所の確保も不可欠で、重い負担がのしかかる。そのため「自由に使える金は助かる」(ベテラン秘書)というわけだ。

汚れた金
 2018年から5年間で60万円の還流を受けたと公表した鈴木淳司前総務相は「派閥から活動費として配られた。つまり経費として使っていいと思った」と説明した。
 鈴木氏の念頭にあったのは、政党から議員への拠出が認められている「政策活動費」。使途の公開義務はない。ただ派閥から配ることは想定されていない。実際、自民党本部の政治資金収支報告書には、各派閥への支出は明記されていない。日本維新の会幹部は「ロジックとしておかしい」と指摘する。
 選挙応援に充てられたとしても、別の問題が生じる。公選法は、選挙運動費用に上限を設けている。有権者数によって異なるが、国会議員の場合は千万円単位。投入した裏金を選挙運動費用収支報告書に記載しなければ、法に抵触する。
 野党は「汚れた金で当選した議員は辞職すべきだ」(立憲民主党の中堅議員)と批判を強める。

脱税
 安倍派では、当選回数が上がるにつれパーティー券の販売ノルマが増える。達成できなければ、議員が自腹で購入する必要があるため、還流された金を「補塡(ほてん)費用」としてプールするケースは多いようだ。
 実際、ある中堅は「ノルマ達成は本当に大変。翌年は売り切れないかもしれないから貯金に回した」と漏らす。
 「銀座のクラブや高級料亭での支援者らとの会食」(自民筋)も使途に挙げられる。
 プール、会食のいずれに充当しても課税対象の「雑所得」とみなされる可能性がある。野党は「派閥ぐるみの脱税だ」と非難する。
 「政治資金の収受に当たっては、国民の疑惑を招くことのないように公明正大に行わなければならない」。
 政治資金規正法がうたう基本理念は今、揺らいでいる。
 今月11日、参院本会議場。法改正を求める野党に対し、岸田文雄首相は「民主主義のコストをどう負担していくかという観点から、各党で議論していただくべきものだ」と述べるにとどめた。