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政治とカネ、退陣引き金/裏金問題 過去の内閣、不信高まり  


政治とカネ、退陣引き金/裏金問題 過去の内閣、不信高まり   「政治とカネ」問題が要因で退陣した主な内閣
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 「政治とカネ」問題で過去に退陣に追い込まれた内閣は少なくない。田中角栄首相(肩書はいずれも当時)の金脈問題やリクルート事件は、直接の引き金となった。政権の体力が弱っていたところに国民の政治不信が高まり、追い打ちとなったケースもある。景気対策などが不評で支持率低迷が続く岸田文雄首相も、自民党派閥パーティー裏金問題の成り行き次第で、さらに窮地に立たされる可能性がある。 (1面に関連)

汚染
 1974年に金脈問題で退陣した田中氏は76年、ロッキード事件で東京地検特捜部に逮捕され、世間に衝撃を与えた。
 88年に発覚したのが、政財官界を巻き込んだリクルート事件。戦後最大級の企業犯罪とされ、竹下登首相、自民の安倍晋太郎幹事長ら派閥領袖(りょうしゅう)、野党議員の周辺にまで「汚染」が広がった。譲渡された値上がり確実な未公開株で利益を上げる手法は国民の怒りを買い、政治不信は極まった。秘書が未公開株を受け取っていた竹下首相は89年に退陣した。
 92~93年には自民党副総裁を務めた実力者、金丸信氏の佐川急便事件や巨額脱税事件、ゼネコン汚職で世論は再び沸騰する。政治改革を求める声が巻き起こるが、宮沢喜一首相は改革に頓挫し、内閣不信任案が可決される。衆院を解散して国民の審判を仰いだものの、衆院選で自民は過半数を割り退陣、下野した。
 政治改革を命題に政権を担った非自民連立政権の細川護熙首相は94年、小選挙区制度や政党交付金の導入とセットで企業・団体の寄付の制限を盛り込んだ改正政治資金規正法を成立させた。その後は唐突に打ち出した国民福祉税構想が不興を買い、東京佐川急便からの借金も発覚して退陣する。

抜け穴
 94年の大がかりな制度改正で沈静化するとみられた「政治とカネ」を巡る問題は、その後も後を絶たない。
 第1次安倍政権の2006~07年には佐田玄一郎行政改革担当相や松岡利勝農相、赤城徳彦農相らに事務所費を巡る架空計上疑惑などが浮上。07年参院選で自民は惨敗して「衆参ねじれ国会」となり、健康状態も悪化させた安倍晋三首相は退陣した。
 09年の政権交代で民主党が与党になっても事件は続いた。鳩山由紀夫首相の元政策秘書が収支報告書虚偽記載問題の政治資金規正法違反罪で09年に略式起訴された。10年には民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体による土地購入を巡り、元私設秘書の石川知裕衆院議員が虚偽記載容疑で逮捕された。米軍基地問題など政策面での行き詰まりもあり、鳩山内閣は10年に退陣した。
 戦後間もない1948年に制定された規正法は多くの「抜け穴」があると指摘されながら、07年の改正を最後に事実上放置されている。今回の裏金問題について自民内には「派閥解体では済まない」(中堅)との危機感が募る。
 政治資金パーティーは派閥の重要な収入源だけに、抜本改正には否定的な向きも根強い。政治不信解消に向け岸田首相がどこまで踏み込むのか、本気度が問われる。