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【識者】「辺野古の無駄」訴え議論を 佐藤学氏(沖縄国際大教授) 


【識者】「辺野古の無駄」訴え議論を 佐藤学氏(沖縄国際大教授)  佐藤学氏
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡る代執行訴訟で、設計変更の承認を沖縄県に命じた福岡高裁那覇支部の判決に対し、県は承認せず、最高裁に上告する方針を表明した。国は年内の代執行に踏み切る構えを見せる中、玉城デニー知事の判断に対する見方を沖縄国際大の佐藤学教授(政治学)に聞いた。


 玉城デニー知事は政治的な立場から上告せざるを得ない。だが最高裁が県に有利な判決を下すことは期待できない。国の在り方が地方自治を尊重している訳ではなく、そもそも司法がこういう問題で国を負かすことは当初から考えられなかった。

 大事なことは、司法の場では実質的な防衛政策の議論は全くなされていないという点だ。最高裁で県敗訴となって「辺野古新基地問題は全て終わり」といった空気には絶対にしてはいけない。

 大浦湾側の軟弱地盤の地盤改良工事を含む事業費は9300億円を予定する。だが10月現在の埋め立て工事の進捗(しんちょく)率は、辺野古新基地の埋め立てに必要な全体の土砂量の15・8%に過ぎない。これから地盤改良で7万本を超える砂などのくいを打ち込む難工事が始まる。単純計算で数兆円の巨費を要することになるが、実際に完成できるのかは見通せない。

 こういった政策の議論を国防に詳しい議員を巻き込んで国会で巻き起こすしかない。実は県民の中でさえ、辺野古新基地建設の税金無駄遣いの問題は知られていない。国民全体にはさらに知られていない。

 本来ならば地方自治をないがしろにするこの問題に対して全国知事会などが「地方自治を尊重せよ」と要望してくれたらいいが、望みは薄い。沖縄側ができることと言ったら、税金の無駄遣いを訴えて共感を広める手法ではないか。(政治学)