<金口木舌>空手形のような工事


社会
<金口木舌>空手形のような工事
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 天才建築家ガウディが手掛けたキリスト教の聖堂「サグラダ・ファミリア」は19世紀末の建築開始から今も完成を見ていない。幾何学に基づいた建造物を完成させることはガウディの遺志を継ぐ職人たちの夢だ

▼世界遺産にも登録された「未完の聖堂」を訪ねる人は年間400万人とも。スペインのバルセロナで最大の観光資源でもある
▼「サグラダ・ファミリアじゃないんだから」とつぶやきたくなるのは、辺野古の新基地建設。政府は強権的な代執行で地盤改良工事に着手したが、経験したことのない難工事が立ちはだかる
▼大浦湾は最も深くて水面下90メートルまで軟弱地盤が存在するが、現有の技術で地盤改良工事ができるのは70メートルまで。実現性を疑問視する地盤工学の専門家もいる
▼荘厳な大聖堂と違い、問題なのは街のど真ん中に居座る米軍飛行場返還の交換条件にされていることだ。「決めたことから後戻りできない」という呪縛や執着に陥っていないか。普天間飛行場はいつ返ってくるのだろう。基地の周辺の暮らしは視界不良のままだ。