<金口木舌>LINEなんて「なかった時代」


社会
<金口木舌>LINEなんて「なかった時代」
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 またLINEのグループが増えてしまった。未読を示す緑の数字がどんどん増える。一つのグループに返信しているうちに、別のグループの会話が終わる

▼インターネットの発達でコミュニケーションツールは激増した。メールでズームの招待を送り、リモート会議。進捗(しんちょく)はスラックで共有し、データはスプレッドシートにまとめる。誰とも会わずに物事は進む
▼SNSはあまたある。知的に見せようとしたり、キラキラした生活を強調したり、気の利いた言い回しで現代を風刺しようとしたり。SNSの特性に合わせて発信内容を変え、知らない人の反応に一喜一憂する
▼現代学生百人一首に目がとまった。「LINEとかなかった時代に生まれたい次こそあなたに直接告(い)おう」。名護高3年の古波蔵柚結(ゆゆ)さんの作品だ
▼「なかった時代」を思い出す。相手の声色、視線。言葉にならない情報が脳内を駆け巡る。スルーなんて選択肢はない。悩んだあげく、ありきたりな言葉が口から出る。でもなぜか気持ちは伝わった。言葉に力があった時代だ。