<金口木舌>そうだ、本屋さんへ行こう


社会
<金口木舌>そうだ、本屋さんへ行こう
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 クスノキに彫った端正で異形の半身。彫刻家の舟越桂さんが亡くなった。よく知られるのは別の作品かもしれないが、イタリア文学翻訳者、須賀敦子さんのエッセー「コルシア書店の仲間たち」の装丁が印象深い

▼須賀さんは言葉を残した。若き日の大切な場所を徐々に失いながら、私たちは孤独が恐れていたような荒野ではないと知っていくのだ、と
▼彼らに最初に出合ったのは本屋さん。生涯の友と呼ぶべき本は、少なからず書店でふと手に取ったものだ。その偶然が相まってそれらの意味はいや増した
▼紙の本離れか、街の書店の閉店が止まらない。県内ではツタヤが減り、リウボウのリブロブックセンターも5月末で閉まる。「まさか」の寂しさと「やっぱり」の諦めと。那覇の栄町の昼夜を照らし、おととし閉店したブックスおおみねを思い返す
▼家族経営の24時間営業。一冊入魂の品ぞろえに毎回うなった。コロナ禍に出合って読んでぶっ飛んだのはボッカチオの「デカメロン」。書店は人生を照らしてくれる灯台だ。今もそう信じている。