<金口木舌>「壁」を壊す力


社会
<金口木舌>「壁」を壊す力
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 ベルリンの壁が崩壊するニュースを見たのは子どもの頃。高い壁に多くの人がよじ登り、工具を力いっぱい振り下ろしていた。世界で大きな変化があったのだと、子どもながらに感じ取った

▼ほとんどの壁は高くて頑丈な構造だ。壊したり乗り越えたりするのは容易ではない。日常生活で直面する困難や、誰かとの間に感じる距離を「壁」と表現することもある
▼車いす利用者の目線に立ってみる。数センチの段差や細い通路を通行できず、誰かの手助けが必要なこともある。車いすを使わない人が気づかない「壁」に随所で出くわすはずだ
▼県の共生社会条例施行から10年が過ぎ、1日に那覇市でパレードが開かれた。参加者は条例制定で障がい者を取り巻く環境が改善されたと評価する一方で、障がいのある人とない人の間の「壁」を指摘する意見もあった
▼どんなに高くて分厚い壁も必ず壊せる。人類は長い歴史の中でそのことを証明してきた。一人一人が力を合わせて現状を変えられれば、障がいの有無に関係なく全ての人が輝く社会は実現できる。