<金口木舌>身を寄せる場所から 


社会
<金口木舌>身を寄せる場所から 
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 数年前、夫やパートナーからドメスティックバイオレンス(DV)を受けた女性が身を寄せるシェルターを訪ねる機会があった。塀に囲まれた中庭に子ども向けの遊具があった。子どもの手を引き、逃げてきた人もいた

▼ある女性は夫に居場所を知られることを恐れ、子どもの外出を制限していた。小学生の女児は大のバスケットファン。週末の観戦を楽しみにしていたが、母親は人目につかない席を選んだ

▼離婚後の共同親権を導入する民法改正案が衆院で可決した。今国会で成立する見通しだが、DVに苦しんだ女性たちの不安は大きい。共に親権を持つ元配偶者からの暴力を恐れているのだ

▼元配偶者と日常的に会うのは「子どもにとってもストレスが大きい」と心配する親の声を聞いた。その言葉にシェルターにいた女児を思い出した

▼バスケ観戦後に女児から届いた手紙には「学校に戻ったらバスケがしたい」とつづられていた。今は高校生になっているだろう。元気でいてほしい。子どもたちが苦しむような法改正であってはならない。