<金口木舌>迷彩服で行進のその先に


社会
<金口木舌>迷彩服で行進のその先に
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 森や海、砂漠などの自然や都市に溶け込むことで軍事的に敵の目を欺く迷彩。米軍基地の多い本島中部にいればおなじみだ。沖縄の歴史で、いや応なく付き合わされてきた柄に違いない

▼開設1年の陸上自衛隊石垣駐屯地が公道で災害物資輸送訓練を実施した。於茂登岳に連なる山々や農道の深い緑、街角に迷彩はなじんでいたか
▼自衛官約30人が背嚢(はいのう)に14キロの物資を詰め、市街地までの往復16キロの道を歩いた。それは行進か、行軍か。地元からは「災害訓練の名を借りた軍事的行軍だ」との批判も出る一方、歓迎の「頑張れ」の声も
▼南西シフトの最前線に置かれた石垣や宮古で自衛隊の迷彩服が持つ意味は「新しい隣人」というだけでは済まない。沖縄戦や戦禍が続く世界情勢を頭の隅に置きつつ、住民は災害や親睦を通じて迷彩柄と向き合う
▼カエルの鳴き声も響く中で自衛官の靴音を聞いた同僚は「単純に戦争を想起させられた」という。なし崩し的に「前例」は積み上げられる。迷彩を、行進をどう受け止めるか。私たちも経験のない道で試される。