<金口木舌>一本の柞(クスノキ)


<金口木舌>一本の柞(クスノキ)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 三好達治賞を受賞した与那覇幹夫さんの詩集「時空の中洲で」に「柞(イスノキ)」という作品がある。与那覇さんの出身地・宮古島は水不足に苦しんできた地域。男の子が生まれると親は柞を植える

▼楕円(だえん)形の葉が雨水を蓄える。幹に結わえたクバの葉とかめをつないで雨水をためる。柞はふるさとを離れた詩人の原風景か。詩に刻んでいる。「一本の柞の大木が、待ち疲れた様相で、夢の中に度々顕れる」
▼民は雨を求め、輪になって舞った。宮古の伝統芸能に雨乞いの集団舞踊「クイチャー」がある。3月末、在沖野崎(ヌザキィ)クイチャー保存会が倉敷ダムでクイチャーを踊った。踊りの前から小雨がぱらつき、やがて本降りになった
▼沖縄地方で少雨傾向が続いていたが、クイチャーの祈りが届いたのだろうか。4月は雨が続き、ダムの貯水量は徐々に回復しつつある。しかしまだ、油断はできない
▼沖縄の伝統的な集落には、井戸があり、わき水があった。節水の意識も定着していた。暮らしの中で小さな水がめを守っていた先人たちの時代に学ぶことは多い。