<金口木舌>効率化で失うもの


<金口木舌>効率化で失うもの
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 約25年前、バレーボール(6人制)のルールが、サーブ権にかかわらず点が入るラリーポイント制に変わった。昨年、米大リーグは投手の投球間の時間制限「ピッチクロック」を導入した。どちらも試合時間の短縮が目的だ

▼それなりのメリットはあるのだろう。当初違和感のあったサーブ権のないバレーにも、もう慣れた。野球についてはどうだろう。投手の間合いは打者との駆け引きの一部であるはず。切り捨てていいものか。どうもふに落ちない
▼費やした時間に対する満足度や効果「時間対効果」のことを「タイムパフォーマンス(タイパ)」という。昨今はタイパ重視が世の中の流れだ
▼ピッチクロックは、投手の故障を増加させるとの懸念があり、選手会も「前例のない脅威」との声明を出している。昨年右肘を手術した大谷翔平選手も「間違いなく負担は増えている」と断言する
▼日常生活も仕事も、われわれは効率化を求めがちだ。無駄を省くことを常に最優先にする。慣れる前に考えたい。切り捨てたもの、本当に無駄なのか。