<金口木舌>記憶にございません


<金口木舌>記憶にございません
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 街頭で演説中に投石が頭に命中した首相は記憶を失い、人格も変わってしまう。劇作家で映画監督の三谷幸喜さんのコメディー作品「記憶にございません!」はそんなシーンから始まる

▼主人公の首相は乱暴な口調も響いて支持率は一ケタ台。野党から不正を追及されると「記憶にございません」。映画タイトルは言い逃れの方便と本当の記憶喪失という、二つの意味を持つ

▼作中の対米交渉の挿話が面白い。米大統領が農産物の関税引き下げを求めてくるが、首相は農家の保護を優先し拒否する。米国一辺倒だったころの記憶を失い、対等に言いたいことを言うので周囲を慌てさせる

▼こんな挿話が成立するのも現実は米国への追認が過ぎるせいか。県内の基地から派生する騒音や悪臭、環境問題、それにパラシュート訓練と負担がとまらない。20日には米海軍の無人偵察機も飛来した

▼率直な話し合いが良好な関係につながる。映画の隠れたメッセージか。現実でもとらわれることなく言うべきは言おう。日本が主権国家であることもお忘れなく。