<金口木舌>すむづれの島の願い


<金口木舌>すむづれの島の願い
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 日本最南端の有人島である竹富町波照間島の伝統行事「ムシャーマ」はにぎやかだ。三つの地域のミルク(弥勒)が仮装行列を引き連れ練り歩く。一行は公民館広場に集まり、皆で多彩な伝統芸能を披露する

▼神として扱われるミルクも公然と仮面を取り、住民と一緒に芸能を鑑賞する。島の長老から若い移住者まで分け隔て無く参加し、「手を取り合って心を一つに」という意味の島の言葉「すむづれ」を体現する

▼政府には、その島が安全保障上の重要な拠点に見えるらしい。自衛隊などのニーズに基づく「特定利用空港」の指定候補に波照間空港を挙げ、滑走路延長をちらつかせた

▼にわかに湧いたのは好機か難局か。住民は町との意見交換会や公民館総会で意見を出し合い、対応を決めた。民主的な手続きで出した答えは「軍事利用はノー」。目先の利益より、平穏を優先した

▼とはいえ、人や物資の往来を船に頼る課題は残されたままだ。滑走路延長はこれからも島の願い。すむづれの島は手を取り合う相手を待っている。軍事ではなく民の手を。