<金口木舌>森からのメッセージ


<金口木舌>森からのメッセージ
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 先日、名護市親川区を訪ねると住民がスマホで撮った写真を見せてくれた。畑を歩く動物が写っている。イノシシかブタか、区民の間でちょっとした議論になっていた

▼動物が目撃されたのは公民館や住宅、畑地の近く。住民らによると東側の山間部から羽地大川を越えてイノシシが出ることは、めったにない。判別できず「ブタが逃げたのだろう」との結論で落ち着いた
▼ところが同じ日、近くの呉我区でリュウキュウイノシシが撮影された。親川で目撃された個体と大きさも似ている。「この40年でイノシシの目撃は初めて」と驚く住民もいた
▼餌のドングリが不足し、人里に下りてきている可能性があるという。恩納村でも住宅地にイノシシがたびたび出没する。役場は遭遇した際は落ち着いて、その場から離れるよう注意を呼び掛ける
▼国内各地でクマなど野生動物による人的被害が相次ぐ。人と動物の生活圏の境界が曖昧となっている証左だろう。県内の住宅地で目撃されるイノシシもしかり。森が大切なメッセージを伝えているのかもしれない。