<金口木舌>初夏の食卓


<金口木舌>初夏の食卓
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 スーパーの棚にゴーヤー(苦瓜)が並ぶと、初夏の訪れを感じる。幼少の頃、家でもゴーヤーを作っていた。お手伝いで菜園の棚にぶら下がったゴーヤーをもぎ取ったのを思い出す

▼台所に立つ祖母がゴーヤーを切り分け、手際よく炒めもの、天ぷら、酢の物を作った。苦みより幸せな味の記憶が鮮明だ

▼元毎日新聞記者の古波蔵保好さんの著書「料理沖縄物語」に「苦い瓜に人生の味」というエッセーがある。幼少期は苦手だったが、長年本土で暮らし、帰郷した際に味わうゴーヤーに「類のない風味を感じる」とつづる

▼今やゴーヤーは全国区。県外産も広く浸透しているが、旬の時期は新鮮で価格も安い県内産を食べたい。ゴーヤーチャンプルー、ニラや車麩(くるまふ)を使うフーチャンプルーは食材費も抑えられる

▼敷居が高いと思われているのだろうか。県民の食卓から、伝統的な琉球料理が遠のいているようだ。でも、家庭料理なら親しみも湧く。手始めに沖縄野菜に挑んでみよう。財布にもおなかにも優しい。食材を生かす祖先の知恵も生きている。