県議選告示を3週間後に控えた5月18日、宜野湾市内の公民館では立憲民主新人の仲西春雅氏の総決起大会が開かれていた。自民派閥の裏金事件を“追い風”と見て、党本部から辻元清美代表代行も駆け付けたが集まった支援者は二十数人。「一緒に政治を変えよう」。仲西氏が力強く政策を訴えるも空席が目立つ会場からの拍手はまばらだった。
宜野湾市区(定数3)には県政野党の自民現職2人のほか、与党は無所属現職一人と社民前職が出馬準備を進めていた。そこに名乗りを上げたのが立民の仲西氏だった。
定数3の選挙区に与党系3人が出馬すれば共倒れになる―。県議選で与党過半数維持を目指す玉城デニー知事を支える「オール沖縄」勢力の関係者には当初からそんな懸念が渦巻いた。
県副知事らが調整に入り候補を絞る動きはあったが、与党3人を含む6人による選挙戦に突入。結果、立民の仲西氏と社民前職が落選し、自民現職に2議席維持を許した。自民2人の得票数は計1万4672票、与党は3人で計1万8336票を得て約4千票上回っていた。「与党で多数を取ることが優先されず、党勢を拡大しようという政党の論理が強すぎた」。知事に近いある当選議員はこう不満をぶちまけた。
他の選挙区でも宜野湾市区と同様に政党間で戦略的な候補者調整ができないまま、与党候補が複数選挙区で競合し、票を奪い合った。立民と社民は、那覇市区でも競合し共に新人が落選した。
“追い風”はかき消された。与党県議の一人は「まさに自滅。オール沖縄の求心力は地に落ちた。政党論理は置いて、これを機にもう一度まとまる必要がある」と力なくつぶやいた。
◇ ◇
16日に投開票された第14回県議選は、与党が現職の落選などで4議席減の大敗。裏金問題の逆風の中、自民は公認の20人が全員当選するなど、野党・中立が議席を大きく伸ばし、議会構成を逆転した。選挙戦の内幕や今後を追った。