うれし泣きをする女性らの肩を抱き、さわやかな笑みを浮かべた。国頭郡区から立候補し当選確実の一報を受けた新人の儀保唯氏(39)だ。大宜味村内の選挙事務所は子連れの若い世代が目立ち、北部地域から初の女性県議誕生に沸き立った。
立候補表明の記者会見を開いたのは今年3月1日。後援会組織も事務所も、時間もない中だったが、同級生らのつながりや女性の支持が広がった。野党候補を応援していた人からも「女性が立つのは大事だ」と決断をたたえられた。
立候補表明後に妊娠していることが分かった。公表を迷ったが「(世の中には)妊娠を言い出しにくい状況もある。社会を変えるなら、どういう反応が出るか見よう」とあえて明かして挑み、当選を果たした。今後は産休・育休を取得するつもりだ。
今回の県議選では過去最多の8人が当選した。一方で48の全議席に占める女性の割合は16・7%にとどまる。
「今の選挙システムは男性が作り上げたものだと感じた。これじゃあ女性議員が少ない訳だ」。沖縄市区から初当選した新人の幸喜愛氏(58)も政治は未経験。「地域や女性の声を届けたい」と挑んだ選挙だったが、選挙独特の活動は驚きの連続だった。
後援会づくりや集票カード集め、通勤時間帯の手振りに夕方から始まる陣営の会議―。時間的にも、金銭的にも、子育て中の人や若い世代が立候補するにはハードルが高いと痛感した。一方「従来の選挙運動を踏襲することがなければ、当選できていなかったと思う」とも。初めての選挙に歯がゆさを感じながら、より多くの人材が挑戦できるよう、選挙運動はその在り方を変えていく必要があると考えている。
女性議員が増えることで、多様な政策立案につながることが期待される。ただ、候補者数に占める割合が少ない。女性の候補者は13人で、全体の17・3%。政党公認では自民や維新に女性候補はいなかった。
ジェンダー法が専門の矢野恵美琉大法科大学院教授は「本来は議会の男女比は半々が理想だ。女性候補者自体が少ない状況に問題意識を持っているかが問われている」と指摘する。女性が主に家事育児などを担う性別役割分担の意識がまだ強く、選挙への挑戦の障壁になっていることが考えられる。
議会でのジェンダーバランスの偏りの要因に矢野教授は投票率の低さも挙げる。「メディアと教育者が、若い人に選挙の重要性を伝えられていない。女性だけが負担を強いられていることがおかしいと考えるなら、変えるにはどうするか。票を投じることの重要性を感じてもらいたい」と強調した。
(’24県議選取材班)
(おわり)