<金口木舌>お笑い豊穣の島


<金口木舌>お笑い豊穣の島
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 お笑い芸人を中心にした芸能事務所FECオフィスを設立した山城達樹さんの生涯を追う映画「ファニーズ」を都内で見た。映画タイトルは幼なじみの渡久地政作さんと組んだ漫才コンビ名だ

▼1990年代に異彩を放った姿を思い出す人もいよう。舞台と並行して県内初の演劇集団の法人化や若手育成の大会開催に奔走した。異才は現代沖縄のお笑いの礎を築くが、96年に26歳で人生を閉じた

▼FECを継いだ弟の山城智二さんが監督を務め、兄の言葉を頼りに生涯をたどる。ドキュメンタリーを基調としながら、お笑いの戦後史を絡める物語はドラマチックでもある

▼こだわった「沖縄らしさ」は随所に見られる。圧巻は霊媒師ユタの登場シーン。達樹さんの今の気持ちや近況をユタを介して語り、家族はしんみりと聞き入る

▼達樹さんが遺したノートにこんな言葉がある。「芸人とは職業ではない。生き方だ」。命日に墓前で繰り広げられる芸人たちの大喜利は、そんな「生き方」に贈った冥銭、ウチカビだろう。沖縄のお笑いはあの世もこの世も豊穣(ほうじょう)だ。