<金口木舌>平和願う心を養う日に


<金口木舌>平和願う心を養う日に
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 沖縄戦は、年を経ても癒えぬ悲しみを体験者の心に刻んだ。二十数年前、初めて体験者から話を聞いた。北中城村から家族8人で南部へ逃げ、妹と生き延びた伊佐順子さんの足取りをたどる平和学習の取材だった

▼糸満市喜屋武の高台で、参加者は青く輝く海を眺め、伊佐さんの話を聞いた。「黒い軍艦が海を埋めていた」。涙を流しながら海を凝視し、声を絞り出す姿が忘れられない

▼伊佐さんの体験は「北中城村史」に収められている。県内では多くの市町村が住民の戦争体験を聞き取り、市町村史誌の戦争編にまとめてきた。体験者が減り続ける中で証言は重みを増している

▼このほど出版された「続・沖縄戦を知る事典」は市町村史誌を元に、地域ごとの沖縄戦を一冊にまとめた。若い世代への体験継承に役立つことを願い、非体験世代の28人が執筆した

▼沖縄戦から79年の慰霊の日を迎えた。癒えぬ悲しみに耐えてきた体験者の声を心に刻み、市町村史誌に体験者が残してくれた数々の証言と向き合う。過去に学び平和を築く決意を新たにしたい。