<金口木舌>ポジショナリティ


<金口木舌>ポジショナリティ
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 命は平等なはずなのに、生まれた場所次第では不平等になる。生来の立ち位置などから生じる利害を社会学的に分析する言葉に「ポジショナリティ」がある。問題はその立ち位置が力関係でつくられた場合だ

▼哲学者の高橋哲哉さんが、その視点から沖縄と日本について語っていた。例えば赤ちゃんの生誕地が沖縄かヤマトかで生じる利害の違い。「沖縄の赤ちゃんは基地負担で何十倍、何百倍のリスクを背負い生まれてくる」というのだ

▼米軍に土地を奪われ、県民が望まないのにできた基地。復帰後も日米の力関係で基地が居座り、戦争リスクが島を覆う。その意味で、リスクの少ないヤマトで生まれた赤ちゃんは「特権を持つ」とも

▼赤ちゃんに責任はないが、年を重ねて社会をつくる立ち位置になれば責任を負う。高橋さんは言う。「選挙権を持ち、政治に関わり始めることで責任は生じてくる」

▼そんな世代がポジショナリティに無自覚なまま問題を放置し、次世代につけを回してきたと言える。顧みれば自分もつけを回す世代の一人。面目ない。