<金口木舌>十里の長城を後世に


<金口木舌>十里の長城を後世に
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 北方民族の侵入を防ぐために築かれた中国の「万里の長城」。手ごわい遊牧騎馬民族を迎え撃つ城壁の総延長距離は1万2千キロにも達した

▼大宜味村には「十里の長城」と呼ばれる構造物がある。大宜味間切(現大宜味村)を囲むように、山の尾根に沿って据えられた石垣や堀切を指す。その全長は31キロにも及んだともされている

▼農作物を狙うイノシシの侵入を防ぐため構築された「ヤマシシガキ」(猪垣)のこと。造られた年代ははっきりしない。琉球王府の歴史書「球陽」によると、少なくとも約240年前に修復した記録が残る

▼1990年代、ハブがいない冬の時期、山に入って猪垣を調査したという宮城長信さん(89)。当時は高校の歴史の教諭だった。調査報告書をまとめ、猪垣は村指定文化財第1号に指定された

▼このほど沖縄地区史跡整備市町村協議会から表彰を受けた宮城さん。「祖先が歩いた道。保存、活用し、親しみを感じてほしい」と話し、人々の営み、知恵が詰まった十里の長城を後世へ受け継いでほしいと願っている。