<金口木舌>無理解という病


<金口木舌>無理解という病
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 河瀨直美監督の「あん」は元ハンセン病患者を通して人間とは何かを考えさせられる映画作品だ。主役の女性の言葉が身につまされる。「こちらに非はないつもりで生きていても、世間の無理解に押し潰されてしまうことがあります」

▼「あん」はどら焼きの餡(あん)のこと。餡づくりの腕を見込まれて元患者の女性はどら焼き屋で働き始めるが、やっと見つけた生きがいも偏見によって奪われる。非のない元患者への仕打ちがやるせない

▼患者はもとより家族にも偏見・差別の被害が及んでいた。父母やきょうだいを強制隔離され、地域からも排除された惨状は胸が痛む。家族被害を認定し、国に賠償を命じた熊本地裁判決から5年

▼先月29日の原告らの集会で男性が国側の主張を振り返っていた。「家族の被害は抽象的という。私は1歳から9歳まで両親と離ればなれでした。これが抽象的ですか」

▼家族被害への無理解はほんの5年以上前まで社会にまん延していた。今もおびえて暮らす家族がいるという。人を押し潰すような世間の病。根治しなくては。