<金口木舌>私たちの「怒り」


<金口木舌>私たちの「怒り」
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 広瀬すずさん演じる沖縄の女子高生・泉が米兵から性的暴行を加えられる―。2016年公開の映画「怒り」。芥川賞作家・吉田修一さんの同名小説が原作のフィクションだが、胸が張り裂けそうになった

▼「いくら泣いたって、怒ったって、誰も分かってくれないんでしょ。訴えたってどうにもならないんでしょ」。やり場のない怒り、無力感が漂う劇中の泉の言葉。さらに胸をえぐられた

▼米兵らによる性的暴行事件がまた発生した。「人間としての尊厳を蹂躙(じゅうりん)する極めて悪質な犯罪」。県議会が全会一致で可決した抗議決議は蛮行を厳しく非難する。県民の代弁者として当然だ

▼だが、沖縄の声は響いていないようだ。米側が発表した対策は遅きに失した。謝罪はいまだ一切ない。事件を「遺憾」と表現するエマニュエル駐日米大使らの声明は沖縄の怒りを人ごとと捉えていないか

▼悲劇を繰り返してはいけない。抜本的な解決のため、沖縄が置かれている現状を変える時だ。「どうにもならない」と諦めてはならない。今のままでは、怒りは収まらない。