県は29日、絶滅が懸念されている国指定天然記念物ジュゴンの生息状況などに関する2023年度報告書を発表した。
食(は)み跡調査では、調査開始以来最多だった22年度と同じ11地点で確認された。目撃情報の増加などから、県は「現在も県内の広範囲にジュゴンが生息している可能性が極めて高いことが確認された」と結論づけた。
県は今回、10年以降の母子個体の目撃情報を基に推定し、「県内での生息個体数は少なく見積もって8個体と仮定される」とした。「県のジュゴン個体群は再生産(繁殖)のポテンシャルを有していると思われる」とした。
食み跡調査は本島周辺と石垣島周辺の計5海域で、空撮や潜水によって実施した。伊是名島周辺(屋那覇島東側)で8地点、古宇利島・屋我地島周辺で2地点、石垣島名蔵湾で1地点確認された。伊是名周辺は4年連続、古宇利・屋我地周辺では2年連続になる。
一方、ふんは名護市久志や辺野古など9地点で採集したものを分析したが、ジュゴンのDNAは検出されなかった。22年度の調査では久志や宮古島市の伊良部島の沿岸部で発見されたふんからジュゴンのDNAが検出されていた。県自然保護課は「状態が悪くて証拠はつかめなかったが、今回見つかったふんがジュゴンのものである可能性は否定できない」としている。
これまでに個体やふん、食み跡に関する目撃情報が38件寄せられた。このうち、23年度中の目撃情報は、前年度までの約2倍の21件で、本島周辺4件、宮古諸島13件、八重山諸島4件だった。
(南彰)