映画や音楽、芝居、小説をどう組み立てるかという議論の流れは最終的に、エクスタシーに達していく過程やリズムをなぞればいい、という結論へ終着する。だとすると、芸術文化に触れて動かされているのは心ではなく肉体。人類は、年月を経て肉体的興奮を呼び寄せるシステムを模索し「起承転結」「序破急」「定番」「型」と呼ばれるものを生み出した。
そして話はシルベスター・スタローンへ。規格外の肉体とビジュアルとパッションに気を取られ見失いがちだが、「ロッキー」をはじめ、彼の作品は完全に「定番」を遵守(じゅんしゅ)している。ベトナム戦争帰還兵の苦悩と怒りを描いた「ランボー」も、体になじんだ定番の心地よいリズムを刻む。
そこにスタローンという特異な存在と派手な爆破が追い打ちをかけ、観客の脳波と血流に影響を及ぼし記憶に深く刻みこまれていく。ただし、その感動と興奮はスクリーンでしか得ることができないのも真実。ぜひ劇場へ。
(桜坂劇場・下地久美子)
◇桜坂劇場・あす公開