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コテージ、炊事場も…子どもたちが古民家再生 築100年の学び舎修繕 卒業生の思いつなぐ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
傾きかけた築100年を超える学び舎(や)の再生に向け、作業に汗を流す児童生徒たち=9日、南城市佐敷

フリースクールなどを運営するNPO法人珊瑚舎スコーレ。校舎は沖縄県南城市佐敷の海沿いにあり、そこから徒歩20分ほどの山に校外施設がある。珊瑚舎スコーレに通う児童生徒たちは、毎週金曜をここで過ごす。校外施設の敷地は約3千平方メートル。2005年から子どもたちが開墾、整地してきた。コテージや作業小屋、たき火小屋、炊事場など、ここにあるほとんどを子どもたちが造った。そして去年秋からは敷地奥にある、築100年とみられる古民家の修繕作業に奮闘している。

木造の古民家は約10年前に宜野湾市から移築された。伝統的な工法で造られていて、屋根には約6千枚の赤瓦がのっている。老人ホーム建設に伴い取り壊しが決まっていたが、珊瑚舎スコーレの卒業生も手伝って現在の場所に移された。

学び舎として利用してきた古民家

ひびがきっかけ

移築後は主に小学1~3年生の学び舎(や)として利用してきた。それ以外の子どもたちにとっても、昼寝をしたり、ゆんたく(おしゃべり)したり、憩いの場になっている。しかし22年秋、珊瑚舎スコーレの講師であり建築家でもある本竹功治さん(40)が、梁(はり)のひびに気付いた。「いつか倒壊する」。子どもたちと教職員が一緒に話し合い、取り壊すかどうか、方法を考えた。その結果「卒業生にとっても在校生にとっても、思い入れのある大事な場所。伝統を学んでつないでいくためにも、今の素材をなるべく生かして修繕して使おう」と決まった。

子どもたちは修繕に取り掛かる前、八重瀬町に出掛け、実際に古民家の修繕をしている人に話を聞いた。屋根の瓦の落とし方や、瓦についている漆喰(しっくい)の落とし方などを学び、本竹さんの協力も得て、まずは約4カ月かけて赤瓦6千枚を屋根から剝がした。現在は壁板と床板を丁寧に外し、木組みの修繕や補強に取り掛かっている。

赤瓦を降ろした際に出たがれきを撤去する子どもたち

卒業生の存在

「子どもたちは毎週自然の中で生活しているから、僕が教えなくてもハンマーや小刀など道具を上手に使える。あの小さな男の子たちは僕より上手に小刀を磨けるよ」。本竹さんが汗を拭いながら笑って見つめた先に、小学3年の比嘉立樹さん(8)と城間栄森さん(8)が、剝がした壁板に刺さったくぎをハンマーで器用に抜いていた。薄い壁板を割ることなく、黙々と抜いていく。近くの炊事場ではかまどから湯気が上がっていて、別の子どもたちが約60人分のもずくスープと炊き込みご飯を作っていた。

かまどで昼食を作る炊事チームのメンバーら

「みんなで役割分担している。道具や炊事でけがすることも当然あるけど、それも当たり前のこと」。学び舎の再生に向けて組織した実行委員会のメンバーの一人、高校3年の山川虎雅(たいが)さん(17)が、作業をしながら話した。「必要なものを自分たちで造ることで、学んだことがたくさんある」。

同学年の横川天南(あみな)さん(17)は「この山にあるもの全てから卒業生の存在を感じる。会ったことはないけど、自分はいろんな人とつながって生きているんだなと分かる」と笑顔を見せた。高校1年の運天十愛(とあ)さん(15)は「古民家には約100年前の先人たちの知恵と技術が詰まっている。それをここに移築して残した卒業生や関係者のウムイ(想い)も受け取れる。次につなぐことを、今度は自分たちが果たしたい」と力強く語った。

学び舎の再生は、現在の高校3年が卒業する24年春までの完了を目指す。8月20日まで修繕費をクラウドファンディングで募っている。問い合わせは電話098(975)7781。

(文・嘉数陽、撮影・大城直也)

珊瑚舎スコーレが学び舎として使っている古民家の再生で、実行委員会の(左から)横川天南さん、山川虎雅さん、盛口海さん、運天十愛さん(珊瑚舎スコーレ提供)

学び舎は築100年の古民家 「壊さず後世につなぐ」子どもたち自ら修繕に挑戦 南城市の珊瑚舎スコーレ