芸能・文化

花の芸術、浜に咲く ストレリチア約8300本を使った巨大な植物彫刻  南城、沖縄産生花で東さんら制作

沖縄産の生花を使って植物彫刻を制作するプロジェクトのメンバーたち=11日午後、南城市玉城の百名ビーチ(ジャン松元撮影)

 オレンジと青が特徴的なストレリチア約8300本をぜいたくに使った、高さ6メートルを超える巨大な植物彫刻が10月11日、沖縄本島南部の南城市玉城百名のビーチに出現した。

 国内外で活躍するフラワーアーティストの東信(あずま・まこと)さんが制作した。

 作品は12日の昼ごろの完成を目指す。

 同日午後3時ごろには、切り花にして百名ビーチを訪れた来場者に配布する予定だ。

 

花の楽しみ方を提案

 


沖縄産の生花を使って植物彫刻を制作する東信さん=11日午後、南城市玉城の百名ビーチ(ジャン松元撮影)

 東さんは、2002年から花屋を営み、現在は東京・南青山で花屋を経営する。05年ごろから花屋に加えて、植物を使った表現活動を始めた。

 沖縄県はストレリチアの日本一の生産地だ。だが、沖縄県民にもストレリチアの知名度は高くなく、「極楽鳥花」と言い換えれば、仏花のイメージが先行してしまうのが現状だ。

 東さんは壮大な作品を通じて、花の新たな楽しみ方を提案する。

 「(ストレリチアは)躍動的で魅力的な花。作品を通じて、新たな見え方を楽しんでほしい」と制作への動機を語った。

 制作初日の11日、午前9時半から午後6時すぎまで、まともな食事も取らず制作に向き合い続けた。

 約8300本のストレリチアを使い切り、作品の大枠を組み上げた。

 12日は午前から仕上げに取り組む予定で、赤い花・ヘリコニア約700本を追加して昼ごろにも完成させる。

 午後には解体するため、完成した姿を見られるのは、わずかな短時間だ。東さんは「切り花として配って、受け取った人の記憶に残ればいい」と作品の意義を強調する。

 

 


沖縄産の生花を使って植物彫刻を制作するプロジェクトのメンバーたち=11日午後、南城市玉城の百名ビーチ(ジャン松元撮影)

潮満ちる浜、1束ずつ仕上げ

 

 約8300本にも上るストレリチアを砂浜に並べ、東氏と制作メンバーが協力して1束ずつ仕上げた。

 鉄パイプで組み上げた骨格に、あらゆる方向からストレリチアの束を差し込んだ。時折、作品から距離を置いて形を確かめ、「輪郭を崩さないように、花の声を聴こう」と声が飛んだ。「花と一体になろう」という意味らしい。

 夕方になると、制作現場には潮が満ち、足場が波に包まれ始めた。強い浜風にさらされながら、足をぬらし、頭の中にあるという彫刻のイメージを具体化していった。

 

 

 

熱視線を送る、生産者の思い

 


沖縄産の生花を使って植物彫刻を制作する東信さん(右上)=11日午後、南城市玉城の百名ビーチ(ジャン松元撮影)

 11日午後2時ごろ、ストレリチア生産を担う生産者ら約25人が現場を視察した。

 JAおきなわ津嘉山支店の花卉生産部会のメンバーだ。 一度で8300本ものストレリチアの注文は、JA幹部も「聞いたことがない」と語るほどの大型注文だ。

 9月末から10月初めに沖縄を襲った2つの台風で沖縄県内の花卉にも被害があり、その台風を「耐え抜いたストレリチア」(生産者)を生産部会のメンバーで協力してかき集めた。

 自らの畑から出荷したストレリチアが壮大な作品に変わる様子を見た、花卉生産部会の神里幸男部会長は「アーティストがストレリチアをこのような作品にしてくれて、嬉しいですよ」と笑顔を見せた。

 

 

有数の産地 知名度は不十分?

 


沖縄産の生花を使って植物彫刻を制作する東信さん=11日午後、南城市玉城の百名ビーチ(ジャン松元撮影)

 温暖な気候の沖縄では、県外産地の生産量が減る時期(端境期・はざかいき)を中心に、花卉の栽培が盛んだ。

 施設栽培や電照栽培で出荷時期を調節し、計画的に栽培する。正月向けや彼岸には、出荷団体が飛行機の臨時便を飛ばして出荷。彼岸の小菊生産量は、全国シェアの9割を沖縄県産が占めるほどだ。

 だが、県民への知名度は高くない。JAの担当者は「(9日に開催された)翁長雄志前知事の県民葬も、祭壇には沖縄県産の花がたくさん飾られていた。でも、県民でそれを気に留める人はなかなかいない」。

 全国一の生産量を誇るストレリチアだが、「職業を“ストレリチア農家”と言っても、知名度が低くて伝わりにくい。仏花のイメージもあって、教えてもいい反応がない」と生産者の悩みを代弁する。

 極楽鳥花と呼ばれるストレリチアだが、英語では「バード・オブ・パラダイス」。楽園の鳥と訳され、生産者も「冠婚葬祭だけでなく、広い場面で使ってほしい。ストレリチアだけを花びんに挿してもきれいで、(規格外の花を)親戚にあげることもある」と花の明るさを強調する。 

 JAの担当者は「まだまだ知られておらず、後継者も充分にいない。この花がなくなってしまう危機感がある」と語り、「地元の人にストレリチアの作品を見てもらい、身近な沖縄の花を知ってほしい」と願う。

 


沖縄産の生花を使って植物彫刻を制作する東信さん(左上)とプロジェクトメンバーたち=11日午後、南城市玉城の百名ビーチ(ジャン松元撮影)

花の表現者として

 

 11日、数時間の制作を続けた東氏は「8千本のストレリチアを生けることはないから、ぜいたくな経験ですよね。花の表現者として、経験したことのないことを経験したかった」と充実した笑顔を見せた。

 これまで、タイの市場で購入した花を使って植物彫刻を造り、アルゼンチンでは標高3500メートルにある塩湖でヒマワリの作品を制作してきた。

 「世界各地でご当地の花を生けていくと、花の捉え方が変わっておもしろい」と魅力を語った。 ストレリチアの植物彫刻は映像や写真に記録して、2019年にアルゼンチンで開かれる現代美術イベントに出品される予定だ。