【キラリ大地で】<アメリカ>NY名門大学院でピアノ専攻 宮里恵さん(25)


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「国境のない自分だけの音楽の世界を追求していきたい」と夢を語る宮里恵さん

 「ピアノを始めたのは4歳。大学在学中に参加したマネス音楽院の夏期講習で、音楽の世界を追求したいと世界中から集まった若者たちの熱気に触れ、進学を決意した」
 現在、ニューヨーク市マネス大学ニュースクール音楽大学院でクラシックピアノを専攻している宮里恵さん(25)=浦添市出身=は、開邦高校から桐朋学園大学に進学。在学中に経験した同大学でのユニークで卓越した指導力を持つ教授陣や学生たちとの出会いに刺激を受け、卒業後の2004年に同大学院に進学した。
 欧米やアジアなど、それぞれの出身国で秀でた生徒たちが集まる同大学院は、クラシック界で優秀な人材を輩出する名門校として知られている。日本と大きくシステムの違う講義を通して知識や見識を深めていくにつれ、入学当初に受けた刺激は、技術を向上させる原動力へと変化していった。厳しい練習が続く毎日で、気が付けば夜が更けているのもざらだという。
 世界の中心と称されるマンハッタン島のタイムズスクエアやブルーノートなどのジャズクラブに出演する一流のミュージシャンから、あすのスターを夢見て地下鉄で演奏するストリートパフォーマーまで、街中に音楽があふれているニューヨークでは、ジャンルを超えた音楽面での出会いに遭遇する機会にも恵まれている。
 人種だけではなく、音のるつぼでもあるニューヨークの土地柄を反映するかのように、クラシック専門の宮里さんの大学院は、レッスンや試験などでジャズ風にアレンジされた曲を弾くことにも寛容だ。
 「学校でもプライベートでも、ほかの楽器やボーカリストたちと一緒にアンサンブルをする機会がすごく増えた。ソロ演奏するのとはまた違う楽しさがいっぱい。コンサートやライブも、利益よりも聞きにきてもらうことが最重要視されているので値段が低く抑えられていて、学生でも気軽に足を運べるのは大きなメリット」と話す。
 今春に迫った卒業予定を目前に、体の芯(しん)から凍り付くような寒さが毎日続くなかで、知り合いのポップス系のボーカリストたちの伴奏やアレンジなどにも積極的に参加。「もっといろんなジャンルの音楽とのかかわりを追求したい」と仲間たちと一緒にアイデアを出し合って音作りを探究している。ビザや就職といった現実的な問題にも直面しているが、可能性を模索する毎日を通して、将来の夢も広がりを見せはじめている。
 「エネルギーが渦巻くニューヨークでは、気持ちの持ちようで夢もどんどん変化していく。同じ音楽への夢を抱えた仲間との触れ合いは貴重な宝。アイデンティティーの核をなす沖縄人であることを強みに、国境のない自分だけの音楽の世界を追求していきたい」。宮里さんは夢実現へ突っ走る。
(平安名純代通信員)