先月末、台湾で中国の「反国家分裂法」制定に抗議するデモが行われた。参加者は100万人以上。史上最大規模のデモに、台湾はわいた。が、実はまさにその日、財界の大物が「独立派との決別」を宣言。政府をはじめ主催者の熱気は、急速に冷めていった。
公開書簡という形で爆弾発言をしたのは、陳政権の強力な後ろ盾でもあった、奇美グループの許文龍氏だ。根っからの独立派と見なされていたが、書簡では「ひとつの中国」「反国家分裂法」支持、を明言。これまで台湾で聞かれることがなかったほど過激な“親中国”発言となっている。
奇美といえば、ABS樹脂では世界最大手。1994年に中国に進出したが、2000年の総統選挙で、陳水扁支持を表明して以来、独立派と見なされ事業は頓挫。韓国企業などの追い上げに、許氏の焦りは高まっていた。
「許氏は会社のため、大陸側に屈したのだ」と台湾政府はむしろ同情的だ。が、「商人に祖国なし」と批判する声も少なくない。当初大陸が“独立派”としたのは四社。すでに3社が“親中派”を表明している。