【アメリカ】貴い命を救った 知事が元通訳兵に感謝状


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稲嶺県知事から感謝状を受け取ったロサンゼルス在住の元通訳兵

 「第4回世界のウチナーンチュ大会」のプレイベントとして位置付けられている日系2世の元米軍通訳兵らに対する感謝状贈呈式が7日午後(日本時間8日午後)、ロサンゼルス市のニューオータニホテルで行われた。ロサンゼルス地区で判明した9人のうち、6人が出席。関係者ら約150人が見守るなか、稲嶺恵一知事が元通訳兵一人一人に感謝状を手渡し、沖縄戦で県民の命を救った行為に感謝の意を示した。

 6人を代表してあいさつに立ったフランク・ヒガシさん(79)は、通訳兵としての訓練から本島上陸までの思い出を回顧。「バンザイと叫びながら多くの住民がサイパンのがけから飛び降りたことを聞き、陥落の近い沖縄でも同じ事態が起こるのは間違いない。何とかしてふるさとの住民の命を助けなければ」と志願の理由を話し、メンバー全員が同じ使命を背負って沖縄に赴いたと語った。
 死線をくぐり抜けながら体験した悲惨な出来事の数々は60年たった今も重みを失うことはなく、「沖縄の人々もいつか自分たちの行為を理解してくれると信じていたが、一つの家族でさえ敵と味方に引き裂いてしまうのが戦争。敵国の米兵と非難もされ、たくさんのつらい経験もしたが、こうして知事がアメリカまで出向いて自分たちの功績を認めてくれたことでやっと胸の仕えが下りた」と英語と日本語で語った。すすり泣きの声が聞こえる会場から大きな拍手が巻き起こるなか、稲嶺知事が駆け寄り、固い握手を交わした。
 北米沖縄県人会の真境名愛子さんは「当時3歳だった私の姉は、壕(ごう)の中で恐怖に脅えているときに聞いた兵隊の声を今でも覚えている。アメリカで生活を営む私たちにとって祖国は2つ。その2つの国で一人一人が持つ悲しい体験を平和な未来を築くバネにしていきましょう」と呼び掛けた。
 贈呈式に先立ち、北米沖縄県人会館で行われたウチナーンチュ大会説明会には、約100人が参加。40分間にわたって質問が相次ぐなど、大会への期待の高さが示された。また稲嶺知事は式典前、ロサンゼルスで沖縄文化を発信するセレクトショップとして地元民らに親しまれている「沖縄ショップ」(上原民子社長)にも足を運び、従業員らを励ました。
(平安名純代通信員)