【アメリカ】日本語学校を長年支える/元教師・伊志嶺さん


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カリフォルニアで30年近く日本語教師を務め、周りの人から高く評価されている伊志嶺和子さん

 カリフォルニア州で生活する約5万人の日本人にとって、最も関心が高い事柄の一つに子供の教育がある。受験指導を重点的に行う全日制の私立学校に企業駐在員の子弟らが通う一方で、永住者の子供たちに「外国語」として日本語を教えているのがロサンゼルス郡南、ハンティントンビーチ市にあるオレンジコースト学園。そこで、約15年にわたって主任教師として同学園を支えてきたのが那覇市首里出身の伊志嶺和子さんだ。

 首里高校定時制の教員などを経て約30年前に渡米した伊志嶺さんは、日本語を学ばせようと息子を同学園に入学させたところ、教師としての経験を買われ、1978年に「日本語教師」として再び教壇に立った。小学部の児童らに読み書きの基本を指導し、90年には主任に就任。教員指導にも手腕を発揮してきた。
 現在、ロサンゼルス郡にある日本語学校は5校。祖父母は日本人だが両親が日本語を話さないという3世や、アニメの影響などで日本文化に興味を持つアメリカ人など約500人の生徒が毎週土曜日、言語や文化などを学んでいる。
 同学園は、91年にカリフォルニア州の非営利団体に認定されたが、借用校舎を使用してきたため、これまでに10回も移転。そのたびに理事会役員らと連携しながら、校舎の確保に奔走した。「生徒数の減少や保護者の負担の増加といった問題にも直面しながら、その都度、団結して乗り越えてきた」と伊志嶺さんは言う。
 アメリカにおける日本語教育は、世代や文化背景などから生じる知識の差異なども考慮しなければならず、必要に応じて教材にも改訂を加えながら、時代に即した指導を心掛けてきたと話す。
 創立30年周年を記念してこのほど開かれた祝賀会では、竹内節子理事長から「的確な判断力と情熱でみんなを率いてきた伊志嶺さんの功績は大きい」と感謝の言葉が送られ、元同僚らが伊志嶺さんのもとに駆け寄る姿も見られた。
 伊志嶺さんは「子供たちの知識の吸収は速い。自分自身も子育てをしながら、生徒たちと一緒に多難な時期を歩んできた。引退した今でもあの指導法が効果的だったか、生徒たちは楽しんで勉強できただろうかと自問することもたびたび。言葉は文化の財産。頑張って日本語を勉強しているという教え子たちの言葉が一番うれしい」と話した。
(平安名純代通信員)