【キラリ大地で】アメリカ 居酒屋風レストラン経営 平野順さん


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県出身者が世代を超えて集まる居酒屋風レストラン「ウエルカム(植花夢)」のオーナー、平野順さん=米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊ターザナ市

 「大勢でも一人でも気軽に行けて楽しめる場所」という評判で、開店以来18年間、常に変わらぬにぎわいを見せているのが、ロサンゼルス近郊ターザナ市にある居酒屋風レストラン「ウエルカム(植花夢)」。白人層はもとより、週末になると数多く来店する県出身者らの「心のよりどころ」といった存在が、オーナーでシェフの平野順さん(46)=嘉手納町出身=だ。

 平野さんの父は宮城県仙台市、母は国頭村奥間出身。基地内の放送局に勤務していた父親の仕事の都合で1978年、18歳でロサンゼルスに移住した。「名字が平野なので、沖縄ではいわゆる『いじめ』の対象だった。小さいころは、同じ沖縄人なのに何で差別されるんだろうかという疑問を抱え続け、高校を卒業したら内地に就職しようと思っていました」と話す。
 青春時代だった80年代、日系企業が集中していたリトル東京周辺は、バブルの影響で活気にあふれ、商社マン御用達のおしゃれな居酒屋がはやっていた。「毎日行きたいけど、若者には高めの値段設定。食材や雰囲気はそのままで格安な店があったら」という思いは、いつか自分の店を構えたいという夢へと膨らんでいった。
 理想の店を胸に描きながらレストランで修業を積んだ後、28歳の時、独立。「当時、周辺地区では初めての居酒屋。かつらをかぶってすしを握ったり、一本締めで盛大に誕生日を祝ったりした」と当時を振り返った。率先してエンターテインメント精神を発揮する平野さんを先頭に、サービス精神が旺盛でフレンドリーな店という評判が次第に定着。18年たった今でも、平野さんの顔を見にやってくる昔なじみの客もいるほどだ。
 在米年数や年齢、世代の異なる県出身者らが店内で繰り広げる交流もさまざま。英語や方言、他国語までもが飛び交う豊かな人間模様が織り成されている。「どんな環境にも適応できる能力と明るさ、人の良さ。『なんくるないさ』と『てーげー』精神は、海外でも通用している。社会に貢献する数多くのウチナーンチュたちとアメリカで出会い、自分も沖縄人なんだと強く誇りを感じるようになった。自分はまだまだ井の中の蛙(かわず)。店を礎に、もっと可能性を試すために新しいものにもどんどん挑戦していきたい」
(平安名純代通信員)