人生の悲喜 星々に投影 TAMATE箱


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星々の姿に人の生きる姿を投影し、見る者にさまざまな問いを投げ掛けたTAMATE箱第3回公演「歩く星たちの軌跡」=24日、沖縄市民小劇場あしびなー

 県出身ダンサー6人でつくるダンスプロジェクトTAMATE箱の第3回公演「歩く星たちの軌跡」(まちづくりNPOコザまち社中、TAMATE箱主催)が24日、沖縄市民小劇場あしびなーであった。

宇宙の星々を題材にメンバー6人が振り付けを競作。強烈な個性が火花を散らし、調和する舞台に人生の悲喜こもごもを投影。星々が呼吸し、歩きだすようにイメージの広がる舞台を繰り広げた。照明や音響などを含め、質の高いステージに来場者を引き込み、2009年から活動する同プロジェクトの成熟を印象づけた。
 幕開けは超新星爆発を思わせるエネルギッシュな舞で導入する、比嘉環振り付けの「ブラックホール」。重低音を強調した音楽が鳴り響く中、荒々しく舞う比嘉を囲むように踊るのは伊野波都、大湾麻利奈、米須香音ら8人。灼(しゃく)熱の渦にのみ込まれ、翻弄(ほんろう)される星々を体現し、流れるように舞った。
 大城志奈子の「月―誕生―」は一転して暗い舞台の上で、内間るり子が陰のエネルギーを感じさせる不気味な舞を見せる。人形に命が宿るように少しずつ人間らしい動きを獲得し、夜空に手を伸ばすシルエットを残す。茉莉花による「金星―聖と俗―」は茉莉花に背を押され、聖と俗を表す大城、上原なつきの動きが次第に調和。聖、俗が鏡のように表裏一体であることを見る者に投げ掛ける。
 4人の女たちが火花を散らし、けん制し合うさまをミュージカルタップ風にコミカルに描く「木星―綺譚わるつ―」、舞台の両袖から駆けだした男女が中央で手を取り、調和した踊りで渇望を表すような「水星―蒼沙漠―」はともに安里円による振り付け。
 知花幸美による「人工衛星」は中盤に無音となり、方々に手を伸ばしては引っ込める狂った機械のような動きが不穏な印象を与える。「火星―赤錆(さび)―」は比嘉振り付け。赤い光に照らされ、赤い布を頭にかぶって踊るさまに、過ぎた日をいとおしむような悲しみをにじませる。
 内間による「土星―天来の響き―」は金のドレスを着た女たちが舞台奥から大きな衣を引き出し、舞台を下りて客席を覆っていく。天女の羽衣にフロアを包むような演出に歓声が湧く。最後は大城の「太陽」で光が渦を巻き、湧き出すエネルギーが会場を満たすような明るい舞で幕を下ろした。
(宮城隆尋)