【アメリカ】碧眼の古武士 沖縄空手修め禅も指導 僧名持つジェームス・ノアさん


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空手の普及などに努めるジェームス・ノアさん

 沖縄空手を通して国際交流の輪を広げているアメリカ人がいる。小林流7段の腕前を持ち、「首里城跡『示無(じむ)』」の僧名を持つ「古武士」ジェームス・ノアさん(48)だ。出身地のミネソタ州でノアさんが空手を始めたのは高校の時。ブルース・リー映画の流行で空手にあこがれ、近くの道場に通った。道場の先生は、沖縄で空手を学んだ元駐留軍人だった。

 ノアさんはその後、日本に留学していた姉を訪ねて渡日。武道と仏教を学ぶため福井県の発心寺で禅を修めた。修行中つらかったのは、暖房装置のない北国のお寺で寒い日を過ごしたことだという。ただ、草鞋(わらじ)で雪道を托鉢(たくはつ)して歩くことは厳しかったが、お寺での生活は全般的に合っていたようだ。
 精進料理も自分で作り大好きだったが、体の大きなノアさんには量が少なかった。お寺での修行中も空手への思いが増し、「示無」の僧名を受けた後、沖縄へ空手の修行に飛んだ。
 「空手は自分のものになるまで時間のかかる競技。始めたからには段を取って、他人に認められたい」。そういう思いから、仲村安吉師範の指導を受けた。通算4年の滞在で、みっちり修行に専念、その後、帰国した。
 ミネソタ大学卒業後、高校で日本語を教えながらYMCAで空手を指導。1992年、ミネソタを訪れた秋田日産の三浦社長の誘いで、再渡日し、同社へ入社。ミネソタ州立大秋田校の非常勤講師として空手を指導した。「碧眼(へきがん)の古武士秋田に在り」と新聞にも数回紹介された。
 秋田滞在中、米国の空手選手として沖縄県立武道館で行われた第1回沖縄空手古武道世界大会に出場したこともある。2000年にインディアナ州へ転職。現在は自動車部品を作る日本企業に勤務。ロボット・トレーニング・コーディネーターとして、部品を作る際に動いている機械(通称ロボット)の使い方、説明をする仕事をしている。そのほか、通訳、翻訳の分野でも活躍している。
 流ちょうな日本語はお寺のお経の本から多く学び得たという。県人会のイベントでは、鋭い眼光で風を切るような首里手形、ヌンチャクなどを披露、長身の体を包む真っ白なけいこ着からのぞく優雅さは、観客を魅了している。
 毎週土曜日は、友人の経営する空手道場で空手を指導しながら、座禅会を開いている。地元の人々が参加。彼らから「礼儀作法、無の世界から学ぶ心の平穏でストレスを解消することができる」と好評だ。
 妻の艶子さん(旧姓・金城)は旧具志川市出身。専正池坊の免許を持ち、生け花の展示場などでボランティア活動もしている。今年高校を卒業、パーデュー大学へ入学し、将来パイロットを目指す長男ジョージ君(18)と、中学生レオナさん(13)の2児がいる。
 ノアさんは「退職後には、空手道場を開き、そばに花屋を持ちたい」と抱負を語った。外国人によって沖縄の文化、武道が世界中に広められることは海外に住むウチナーンチュとして誇り高い気持ちだ。
 (記事、写真ともインディアナ州のクラーク尚子さん提供)