<キラリ大地で>【フランス】挑戦を忘れては駄目 演劇を学ぶ富田めぐみさん


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
フランスで演劇を学ぶ富田めぐみさん

 富田めぐみさん(31)=東風平町出身=の声や姿がラジオやテレビで見られなくなって、久しいのではないか。
 富田さんは2004年度の文化庁新進芸術家海外派遣制度で昨年9月からフランスのリヨンにある劇団「Boxer Blue Theatre」に所属していた。過去形になったのは、6月からドイツの演劇祭を見に行ったり、また、沖縄に戻って沖縄市を中心に行われた「国際児童・青少年演劇フェスティバルおきなわ」のスタッフとして働いたりと、フランス以外でも活動していたからだ。

 2年前に初めてフランスを訪れた。演劇祭で有名なアヴィニョンでたくさんの演劇を見る。彼女が印象に残ったのは地方の劇団。「独自の地域色を生かし、オリジナルな作品がある。ちょうど芝居をつくり始めたいと思っていたころだった」と富田さんは語る。
 その演劇祭で「Boxser|」の芝居を見た。その劇団の芝居は富田さんがやろうとしているものに近いものがあった。それは「言葉、身体表現、音楽」。この3つの要素が作品の中でそれぞれの役割を果たしていた。
 彼女は伝統芸能を使った新しい表現を目指しているが、「スタイルこそ違え、言葉、身体表現、音楽が刺激し合って、1つのものをつくり出している」ことに共通のものを感じた。
 富田さんは高校生のころからラジオやテレビ番組のアシスタントとして活躍。女優としても中江裕司監督の「パイナップルツアーズ」やNHK大河ドラマ「琉球の風」に出演している。20代半ばに経験した舞台に1番ひかれ、「ここに来るためにいろいろやってきたんだと思った」という。
 フランスでいい舞台を見るたびに「沖縄のアーティストたちにも見てほしいと思った。どんな刺激を受け、何を考えるだろうか、とも思った」と述懐する。
 地方劇団を選んでよかったと思うのは舞台が実験的でいつも挑戦していること。「沖縄の人も、もっと外に出てほしい。挑戦を恐れては駄目。新しいものを生み出し続けないと、今の観客とは向き合えない。沖縄の今まで培ってきたものを大事にして新しいものを育てないと…」と熱く語るその裏には沖縄、そして、芝居への愛着がある。
 フランス滞在中もしばしば沖縄へ帰り、芝居を書き、上演していた。今年2月には韓国でも発表した。10月からは韓国へ短期留学する。
 来年は所属する沖縄の劇団、ACOで富田さんもアヴィニョンの演劇祭に参加する。海外経験も豊富な舞台人がいることは沖縄の演劇界にとっても心強いに違いない。
(又吉喜美枝通信員)