【フランス】「人骨展示館」仏訳本出版へ/又吉さんの作品に興味/オノレさん仏訳


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翻訳者のパトリック・オノレさん

 芥川賞作家、又吉栄喜さんの作品「人骨展示館」が仏訳され、来年にもフランスで出版されることになった。沖縄の作家の仏訳出版は初めて。
 文化庁主催「Japanese Literature Publishing Project(現代日本文学の翻訳普及事業)」において、今回、本作品はフランスでの翻訳出版作品の一つに選定された。
 又吉さんの作品をフランス語に訳するのは翻訳者でパリ在住のパトリック・オノレさん(45)。
 オノレさんは又吉さんの作品に興味を持ち、3年前沖縄を訪問。当時、最新作で出版されたばかりの「人骨展示館」の翻訳を又吉さん自身が希望した。オノレさんは約1年かけて、作品をフランス語に仕上げていった。

 物語は、グスク跡から発見された人骨をめぐって、沖縄独特の歴史背景、ユーモア、風刺を織り交ぜながら繰り広げられていく。翻訳者のオノレさんは、「作者は、沖縄独自の歴史、文化背景、そしてそこに根付いている独自性を物語の中で淡々と描いている。沖縄や日本の読者が見いだす、ユーモアや自己嘲弄(ちょうろう)、そして優しさをフランスの読者が日本文学の枠を超え、クレオール文学(フランス語によるカリブ文学)に通じる物語として読んでくれることに期待する」と話した。
 さらに「翻訳者としては、それを考慮し、表現しなければならない。その小説のスタイルが決まる初めの部分、主人公明哲と考古学者琴乃の出会いのシーンは、平たんな描写だけに翻訳の難しい部分でもあった」と語った。
(又吉喜美枝通信員)