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九州の県庁所在市で男子トイレにサニタリーボックス 福岡市は設置施設の一覧なし(西日本新聞提供~JODパートナー社から~)


九州の県庁所在市で男子トイレにサニタリーボックス 福岡市は設置施設の一覧なし(西日本新聞提供~JODパートナー社から~)
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 九州の県庁所在市で、公共施設の男子トイレにサニタリーボックス(汚物入れ)を設置する動きが広がっている。加齢の影響や前立腺がんの後遺症で尿漏れパッド、紙おむつを使う人が増えており、安心して外出できる環境づくりの一環。全国的に見ると、取り組みは緒に就いたばかりで、専門家は「デリケートな話題で当事者は声を上げづらいが、潜在的なニーズは大きい」と指摘する。

 九州の7市は2022年以降、順次男子トイレの個室への導入を進めていた。長崎市は各庁舎や公民館、図書館のほか、観光客の多い稲佐山公園やシーボルト記念館、水族館など50カ所に配備済み。一覧表を市のウェブサイトに載せ、利用者にもPRしている。佐賀市は主な公共施設の6割に当たる60カ所(昨年6月時点)に取り付けていた。

 福岡、熊本、大分、宮崎、鹿児島の5市は本庁舎などに配置済みとしつつ、全体像を取りまとめていなかった。多くは「施設ごとに所管課が異なり、把握していない」(福岡市収集管理課)としている。

 一般社団法人「日本トイレ協会」(東京)によると、昨年5月時点で導入を公表していた自治体は20都県と274市町村で全体の2割ほど。庁舎のみでの設置が目立つという。

 排せつにトラブルを抱える男女や介助者計265人を対象にした協会のアンケート(22年)では、男性の64・1%が「捨てる場所がない」と回答した。衛生用品を使う男性にとって、臭いや漏れへの不安が外出を楽しめない要因の一つになっていると分析している。

 協会の砂岡豊彦理事(69)は、汚物入れを取り付ける際の注意点について「十分な容量の容器を選び、具体的に何を捨てていいのかが分かるよう説明板を付けること」と強調した。使用済みの大人用紙おむつはドッジボールほど(直径約20センチ)に膨らむため、15リットル以上の容器が望ましいという。汚物入れだと視覚的に訴えることで、一般ごみの混入を避ける狙いがある。

 清掃の手間と費用を理由に、導入に後ろ向きな自治体も少なくない。砂岡理事は「高齢化社会が進むことを考えれば、『シモの安心』の確保は街のにぎわいづくりにつながるはずだ」と述べた。

■あな特アンケート 切実な声相次ぐ

 本紙「あなたの特命取材班」が男子トイレのサニタリーボックス(汚物入れ)にまつわるアンケートを行ったところ、尿漏れパッドや紙おむつの利用者とその家族から「捨てる場所がなく、レジ袋に入れて便器の陰に置いた」「女子トイレで捨ててほしい、と頼まれた」といった切実な声が相次いだ。

 調査は今月20日まで実施し、福岡や佐賀など6都県から27人が回答した。自身や家族が衛生用品を使うと回答した17人のうち、13人が「外出時に処理で困った経験がある」と答えた。

 福岡県筑後市の男性(75)は、2時間に1度は衛生用品の交換が必要になるため、「ショルダーバッグを持ち歩いている」という。「尿漏れパッドが汚れても帰宅するまでそのまま」(同県筑紫野市の70歳男性)との体験談もあった。

 「尿漏れケアは若い男性も含めて一般的になった」と語るのは、自身も衛生用品を使用する同県飯塚市の男性(31)。長崎市の女性(66)は「年を取ると男女問わず、紙パンツがいる。自分や両親のことを想像してほしい」と述べた。熊本市の女性(62)は「友人2人が前立腺がんとなり、必要性を感じている」。

 家族の立場からは「『女子トイレの汚物入れに捨ててくれ』と頼まれる」(福岡市の52歳女性)、「これだけ大人用おむつが流通しているのに、なぜ男子トイレにも必要と気付かないのか」(福岡県久留米市の65歳女性)との声があった。

 将来的な普及を見据えての注文も。福岡市の男性(75)は「汚物入れは様式がさまざま。統一マークを作り、ふたに表示すると良い」。北九州市の女性(69)は「トランスジェンダー男性(出生時は女性、性自認は男性)のためにも。今は生理の時に持ち帰るしかない」とおもんぱかった。

 福岡市の女性(65)からは「赤ちゃんのおむつは『お持ち帰りを』というのが一般的。女子トイレの汚物入れも主に生理用品のため。男子トイレだけ捨てられるのは違うと思う」との意見もあった。(西日本新聞・黒田加那)

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