ベトナムで日本ブランドを仕掛けるシングルマザーの女性社長が沖縄を度々訪れる理由 ロータスグループ メイCEOインタビュー


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アジア・ASEAN諸国の中でも高い経済成長が続くベトナム。人々の購買力の高まりとともに「メイドインジャパン」への人気も高まっている。そのベトナムで、日本製品のヒットを仕掛ける上で鍵を握る女性経営者がいる。ロータスグループの創業者でPresident&CEOのレ・バン・メイさんだ。沖縄で11月14日、15日開催の国内最大規模の国際食品商談会「沖縄大交易会」に参加するため来沖した。1996年、日本製の紙オムツの販売代理からはじまったロータスグループは今や「丸亀製麺(丸亀うどん)」、「CoCo壱番屋」などレストラン事業のほか森永、クラシエ、ニッスイ、旭化成など日本の名だたる企業のシャンプー、ラップ、浄水器など計500商品以上の販売代理を担う。売り上げは75億円規模に上る。創業のきっかけはメイさん自身が長女に日本製の紙オムツを使用したことがはじまり。母親として、女性としての視点も生かしながら事業を成長させてきたメイさんに、ベトナムでの沖縄県産品の可能性や女性経営者としての生き方などについて話を聞いた。

(聞き手・仲井間郁江 琉球新報Style編集部)

Q、沖縄へは何度目の来沖か。
大交易会の度に参加しており、今回で4回目。日本各地で開かれる商談会に参加しているが、沖縄の物だけでなく各地の物が沖縄という1カ所に集まって商談できる「大交易会」は他の商談会と違いとても魅力的だ。

Q、沖縄の商品で注目している分野は。
「子ども向け商品」「健康食品」「化粧品」を意識している。ベトナムでは海藻などが人気だが、中でもモズクから抽出される「フコイダン」の商品はとても人気がある。多くのベトナム人は日本のライフスタイルへの憧れがあり、それを真似したいと思っている。より「おいしいもの」「長生きする」「健康に良いもの」などがキーワードだ。子ども向けの食品のほか、親を大事にする社会なので高級な健康食品にもニーズがある。
 

日本語も堪能なメイさん。インタビューは全て日本語で答えてくださいました。

Q、日本の名だたる企業と連携しヒットを生み続けているが、日本商品をベトナムで販売し始めたきっかけは?
ロシアの大学への留学を経て帰国後にベトナムで日系の商社に就職した。日本のある企業から「紙オムツをベトナムで販売したい。代理店を探してほしい」と言われた。しかしどこも「こんなの高くて売れないよ」と言い、なかなか見つからなかった。ちょうどその頃私は長女を出産したばかりで、試しに長女にその紙オムツを使用したら、それまでどのオムツでもかぶれていた娘が日本のその商品ではかぶれなかった。どこも代理店にならなかったので「私がやります」と手を上げた。それが1996年。起業したきっかけ。

ただ、最初の10年は赤字続き。最初は店頭に置いて販売してもらおうと考えたが、「こんな高いもの売れるわけがない」と置いてくれなかった。それならと、子どものいる富裕層の家に無料で試用してもらう方法にチェンジした。サンプルを家庭に送り使用感などをヒアリングして徐々に広げていく方法をとった。その間も何度も「もうやめましょう」と言われたけれど、私自身があきらめるのが嫌いということもあってやめなかった。そうするうちに「10時間も使用でき、蒸れない」という日本製のクオリティが評判になり、他にも日本製の子ども向け商品はないか?と問い合わせが入るようになった。そして粉ミルクやベビーフードと拡大していった。

Q、シングルマザーとして4人の子どもを育てながら社長業を続けていると聞く。
13年間結婚生活をしていたが、悩みに悩んだ末、離婚した。当初は、子どものためには離婚しないほうがいい、自分が我慢すれば良いと考え結婚生活を続けようと考えていたが、子どもに「お母さんが我慢して不幸な姿は見たくない」と言われた。それで決心がつき離婚した。1996年の起業後に離婚したので、仕事もしながらの子育てだったが、最初の10年くらいは会社もそれほど大きくなかったので毎日午後6時には帰宅し、夕食を作り子どもたちの勉強を見るという生活ができた。
 

Q、日本では経営者や企業の幹部陣を女性が占める割合がまだ低い。ビジネスをしていく上で女性であることがハードルに感じることはなかったか。
ベトナムには女性経営者は結構多い。ITや機械系は男性の経営者が多いが、食品や化粧品など女性のセンスが重要になる分野では女性のリーダーが多い。性別は関係ないと思う。
 

ベトナムの民族衣装「アオザイ」を着て。

Q、経営者として社員と接する上で意識していることは。
ベトナムでは今、5年以内に転職する人がとても多い。会社の成長には優秀な人材の定着が不可欠。モチベーションを維持しつついかに長く会社で働いてもらうか。同時に採用した10人でも全員が同じ育ち方をするわけではない。パーフェクトな人間はいない。褒めながら時には注意しながらというバランスが重要。「この商品どう思う?」と社員に意見を聞くとき、私は最後まで聞くように意識している。子育てでも子どもの言い分に耳を傾ける場面がある。そういう意味では女性は人材育成が得意かなと感じる。

Q、ベトナムと沖縄は気候風土が似ている。北海道のように大きな違いがないため、沖縄の商品は「特別感」を出すのが難しいのではないかと感じるが。
たとえベトナムに海藻があったとしてもフコイダンは抽出できない。技術がない。技術は重要だ。沖縄の商品は「メイドインジャパン」であることに加え、日本の中でも「日本人にも人気の場所」であることも強力なブランドになると思う。ベトナムにも海はあるが、ショッピングも食事も海も、というトータルで楽しむことができるのが沖縄の魅力だ。直行便が飛べば沖縄に行きたいという人は多いはずだ。日本と言えばまず北海道や東京が有名。沖縄の認知度を上げるためには商品単品だけPRするのではなく、旅行とセットやライフスタイルなどトータルで宣伝することが大切だ。旅行会社とタッグを組むことが大事だと感じている。
 

現在、娘さんたちはイギリスに留学中。子たちの成長に話題が及ぶと笑顔で顔がほころびました。

Q、ベトナムへ商品輸出を考えている企業へアドバイスを。
日本でヒットしている商品だからと、そのまま持ってきて店頭に並べるだけでは売れない。この商品を使用したらこうなる、というメリットが伝わらないとダメだ。SNSやWEB上での広告のほか店頭で説明する販売員の配置、パッケージも現地の人が魅力に感じるように変えることも必要。価格が高い分、その分の価値が消費者に伝わることが重要。

日本製品は車や電化製品が長くベトナムで受け入れられている。何十年使っても壊れない「ジャパンブランド」の高品質さを多くのベトナム人は体感している。「日本製」への信頼は他の輸入製品に比べてもダントツに高い。この「メイドインジャパン」ブランドがあるので、これからベトナムに商品を輸出する企業はゼロから市場を作らなくて良いという利点はある。ただ価格が高い分の価値が伝わらないと、お金は払わない。

ベトナムで一番の高層ビルに「CoCo壱番屋」が出店しているが、値段は日本と変わらない800円。ベトナム人にとっては普段の食事には払わない高価格帯だ。店に来てもらうためにはパーティーに行くような気分になるよう、特別な空間にしている。ベトナムで若い男女が出会うマッチング番組があるがその番組も「CoCo壱番屋」を使用している。デートで行きたい、おしゃれスポット的な位置づけにするように意識している。

Q、ズバリ、成功の秘訣は?
ベトナムで日本商品を展開する際、商品だけでなく日本の子育て情報やライフスタイルなどの付加価値も合わせて発信している。日本では、地震や災害が起きた時でも子どもでもきちんと並んで順番を待っている。このような日本の子育て方法は素晴らしいと思う。こういう日本の子育て方や知恵などを発信することで日本のライフスタイルの「ファン」ができる。
例えば「さけフレーク」を販売する時も、商品だけでなく魚のDHAという栄養が子どもの成長にも大切です、という風に健康情報・子育て知識も合わせて発信する。韓国ドラマが世界で受け入れられその他の商品も認知されたように、まずはその国・地域のライフスタイルの「ファン」を作ることが大事だと感じている。
 

【リ・バン・メイ氏 プロフィール】
16歳でロシアに国費留学。ロシア人から「日本の製品が一番」と聞き日本に興味を持つ。帰国後、ハノイ貿易大学を卒業。1990年、日商岩井のベトナム子会社に入社。1996年、日越貿易会ホーチミン支部長に。同96年会社設立。「日本基準と同等の製品やサービスを提供しベトナム人の生活の質の向上に貢献する」との思いから、会社のロゴマークはベトナムの国花である「蓮」と日本の花である「桜」を組み合わせたデザイン。