こんにちは、みわです。
みなさんは “子どもの権利条約” がどんなものか知っていますか?
聞いたことはあるけれど、詳しい内容は分からない…なんて方も多いかもしれませんね。
これから全8回の連載企画として、子どもの権利条約に詳しい専門家や学校の先生へのインタビューを紹介します。この連載を通して、一人一人の権利が等しく尊重され、誰もが生きやすい社会に向けて「まず一歩」踏み出すきっかけになればうれしいです。
【前回の記事はコチラ ☆ 子どもの権利を知ろう・活かそう】
https://ryukyushimpo.jp/style/article/entry-1142880.html
今回お話を聞いたのは、美ら島法律事務所の弁護士の横江崇さん。女の子の緊急避難施設(虐待などで家が安全ではない子どもを預かるシェルター)の理事長、沖縄県子どもの貧困対策に関する有識者会議の構成員としても活動しています。沖縄弁護士会・子どもの権利に関する特別委員会のメンバーとして、公立学校の特別授業(いじめ予防)の外部講師を務めるなど、日常的に子どもたちに接しています。6歳と1歳のお子さんを育てる現役のパパでもある横江さんに、子どもの権利条約(以下「権利条約」)の軸になる考え方などを教えていただきました。
―権利条約とはどんな内容ですか? 横江さんが学んだタイミングも教えてください。
権利条約は全54条からなり、子どもの権利には四つの大きな柱があります。防げる病気などで命を奪われない「生きる権利」、教育を受け、休んだり遊んだりしながら自分らしく「育つ権利」、虐待や搾取、差別などから「守られる権利」、自由に意見を表したり、グループで活動したりするなどの「参加する権利」です。日本で批准された1994年当時は高校生だったので、本格的に学んだのは弁護士の仕事を始めてからでした。弁護士は児童福祉法や少年法については当然詳しいのですが、権利条約は弁護士の間で十分に意識されていないこともあります。この4月に施行された「沖縄県子どもの権利を尊重し虐待から守る社会づくり条例」※1 に関わった時も行政担当者が権利条約を十分に意識しておらず、そもそもの基盤がないというか、権利や人権が担保されていない現状に、じわじわと危機感を感じています。
―弁護士として子どもの権利や人権をどうやって教えるのですか?
地域講演会などで子どもの権利をテーマに話すことがあります。権利の基本は「人権」で、人間らしく生きるために誰もが持っている権利です。その原則は「自由」であること。自由といっても、まだ成長途中で未熟な子どもは、何でも自由にできるわけじゃない。命に関わるようなことは、親の義務として子どもに教えなければいけないけれど、それが行き過ぎてしまう例もあるんですよね。ルールを守らせる、きちんとしつける、一日のスケジュールを管理するなど、子どものためにやっていることでも、度を超すと虐待になってしまいます。
―親としてよかれと思ってやったとしても、時には虐待に?
シェルターに保護される子の中には裕福で教育熱心な親から、精神的な苦痛を与えられて育ってきた子がいます。親が求めるいい子を演じさせられ、彼らに従い続けてきた結果、心身を壊してしまった子どもたちです。子どもを不完全な存在と決めつけ、本人の意思を尊重しないことをパターナリズム※2と言いますが、それは学校現場でもよくあります。
―確かに子どもの自由を束縛する、おかしな校則などが多いと感じます。
僕は東京の中央大学付属高校に通っていたんですが、そこは校則がありませんでした。自分たちで話し合ってルールをつくることができたんです。全ての選択、判断は自分でしなければいけないから大きな責任を伴うけれど、それによって得られる自由があった。髪を染めるなど個性的な子もたくさんいましたよ。でも自由を履き違えずに、自分を律することを学んでいました。自由=自律を体感し、自分のもつ権利の重みを知った高校時代でした。
―子どもの権利を尊重し自由を与える…。従来の親子関係ではなかなか難しそうです。
どうしても習慣的に上下関係があり、急には難しいですよね。ただ、一つ知ってほしいことは、権利の主体者は子ども自身ということ。その子の独自性(個性)を大事にし、一人の独立した人格として尊重しなければいけません。子どもは親の所有物ではないのです。育児に家事、仕事と毎日忙しい親御さんの状況もよくわかります。目の前のことでいっぱいいっぱいで、子どもに向き合う余裕がない。それでも子ども自身が考え、答えを出し、失敗し、再挑戦する経験が必要です。家庭でできないなら公的なサポートがあるべきで、社会全体で子どもを育てるシステムが求められています。
★注釈
※1 沖縄県子どもの権利を尊重し虐待から守る社会づくり条例
子どもの権利の普及啓発をはかるほか、児童を虐待から守る施策を推進する。条例は「適切に養育されること」「虐待から守られること」「自己の意見を表明すること」などの権利を「子どもの権利」と定義。保護者には体罰や心身を傷つける行為を禁じることを「責務」として規定。県や県民、市町村など関係機関にも施策の実施などの責務を課す。(2020年3月20日、琉球新報より)
※2 パターナリズム
強い立場にある者が弱い立場にある者の利益のためだとして、本人の意思は問わずに介入・干渉・支援することをいう。親が子どものためによかれと思ってすること。日本語では家族主義、温情主義、父権主義。(ウィキペディアより抜粋)
『 追いつめる親 「あなたのため」は呪いの言葉 』
著:おおたとしまさ
出版社:毎日新聞出版
子どものためといいながら、親のエゴを満たすために勉強させていたら…。身近に潜む教育虐待をリポート。
(えくぼママライター やけなみわ)
☆ プロフィル ☆
やけなみわ
神奈川県出身の二児の母。元編集者・ライター。現在は小学校のPTA活動を中心に、子ども食堂のボランティア、平和・環境活動、親子英語クラブの運営に携わる。趣味は観劇。旅行。スキューバーダイビング
アイコンをクリックして「たいようのえくぼ」ページへ↓