ネットスラングとルッキズム モバプリの知っ得![116]


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先月29日、セガは配信した動画内での同社役員の発言を謝罪しました。問題となったのは、プロゲーマーの高校生に向けた「チーズ牛丼食ってそう」という発言。

一見、何の問題もないように感じる発言ですが、ネット上では「チーズ牛丼」が人の見た目をバカにする文脈として使われる「ネットスラング」として定着しており、言葉を使うタイミングや見た目を揶揄する「ルッキズム」について考える事態となりました。

多く存在するネットスラング

この「チーズ牛丼」という言葉は、「オタク男性は、すき家の人気メニュー『とろ〜り3種のチーズ牛丼』をよく食べていそう」という、偏見から誕生し流布したネットスラングです。

ネットスラングとはネット上で誕生し、ネット上で使われる「俗語」のことです。一部、自虐として自身に対して使用する人はいるものの、基本的には真面目そうなオタク男性への「レッテル貼り」として使われる、かなりネガティブな言葉です。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

ネットスラングは他にも多く存在します。「チーズ牛丼」とならび、「ポカホンタス女」というネットスラングも今年に入り誕生しています。これは海外思考が強く、なにかあると海外の事例を引き合いに出してくる女性に対して揶揄するもので、軽蔑の意味合いが強いかなりネガティブな言葉です。女性蔑視とほぼ一体化した言葉なので、「チーズ牛丼」と同じく意味を強く考えないといけません。

また「女子高生」を意味する「JK」という言葉は当初、児童売春のやりとりを掲示板で行う際の隠語として誕生したネットスラングです。しかしながら現在では、そうしたネガティブな意味は消えて使われています。ウォッシングに成功し、ネットスラングではなく、一般的な言葉として定着しています。言葉は時代によって変化し、使う文脈によって意味が大きく変わります。

今回はゲーム会社の役員が、プロゲーマーの高校生に対して「チーズ牛丼」という言葉を使いました。二人の年齢や立場を考えると、かなり失礼で、謝罪もやむを得ないように思います。

言葉の使い方

身内だけの場所で使えば見逃される言動も、パブリックな場所で使う/行うと批判の対象になることがあります。

政治家の後援会での演説の発言が、問題視されて謝罪にまで発展することがあります。高校生がアルバイト先で悪ふざけした動画をSNSにアップして、炎上することがあります。一部では容認されているネガティブなネットスラングを公の場所で使って発言する今回の事案も、同じ流れだと考えてもいいでしょう。

この記事を書いている私も、家族・友人がいる場での言動、SNSでの言動、商用メディアに記事を書くときの言葉、あるいはテレビやラジオなどでの発言の、セーフのラインを自分なりに考えて使い分けています。(自分なりに使い分けているつもりですが、たまに間違えていることもあり、その都度反省しています…)

言葉は、使い方やタイミングで大きく意味が変わってきます。正解のラインが目に見えて分かるものではないので、常に意識しながらそのラインを感じるしかありません。
ネットやSNSでは全世界に自分の言葉が投下されるため、なおのこと慎重に、考えて使う必要があります。

ルッキズム、古くない?

今回の「チーズ牛丼」発言は、ネガティブなネットスラングであると同時に、ルッキズムの問題も含んでいます。ルッキズムとは、人の外見を過剰に評価したり、あるいは蔑む態度のことです。

人の見た目をバカにしたり、お笑い番組のようにいじる、ルッキズムに対して世の中は徐々に厳しくなってきています。その人の体型や、肌の色や髪質などを杓子定規(しゃくしじょうぎ)の美意識で評価をするのではなくその人らしさとして受け入れ、みんなが苦しまずに安心して暮らされるようになろうという価値観が浸透しているからですね。

そうした中で、無邪気に人の外見について言及することは、知らず知らずのうちに人を傷つけることになります。

ネットスラングは特定の属性を、ルッキズムでバカにするものも多く、より慎重な使い方が求められるでしょう。誰しも無邪気な言葉で人に傷つけられたり、逆に人を傷つける可能性があります。だからこそ、使うタイミングや文脈、そして内容を吟味して適切に使っていきたいですね。

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」8月9日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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