10代の中高生は、大人と子どもとの間で激しく揺さぶられる嵐のような時期。
自分を確立するために必要な成長過程ではあるけれど、はたから見ていると危なっかしかったり、扱いづらかったり、びっくりするくらい傷つきやすかったり…。
今回お話を伺ったのは、臨時的任用教員、担任補助、進路支援員として県内の高等学校に勤務し、特に不安定な傾向が強い生徒や課題を抱える子どもたちと10年近く向き合ってきたモモさんです。
今は教職を離れましたが、4歳から小学生までの3人のお子さんを育てているモモさんに、多感で葛藤の多い思春期の子どもの権利について話を聞きました。
―高校の先生としてさまざまな雇用形態で働いていらしたのですね。
教諭としてクラス担任を受け持つこともありましたが、近年は進路支援員をしていました。多くの学校はカウンセリングに重点を置き、本人の希望に沿って納得するまで話し合う体制をとっていましたね。教員も横一列という考え方で、職員会議などでは誰でも自由に意見を言えたので、一人ひとりが尊重される職場環境だったと思います。私は一教員として学校現場に携わったことで、沖縄の高校生が背負っているさまざまな課題を目の当たりにしました。関わる大人の資質も問われています。
―十代後半くらいになると、先生や両親との関係性も変わってくるのでしょうか。
高校は義務教育ではないので基本的に本人の自主性を大切にして、子ども扱いはしなかったです。一方、親御さんは彼らと対等なコミュニケーションをとるのが難しいように見えました。親の意見に圧倒されて黙ってしまう子もいたし、親の問題に巻き込まれて八方ふさがりになる子もいました。児童相談所が介入するような場合は、DVや虐待によってうつの兆候が出てきたり、リストカットをしてしまうケースも…。家庭の事情から権利を奪われてしまった生徒を何人も見てきました。
―親御さんの影響で権利が奪われるって、具体的にはどんなことですか?
大学で学びたい意思があり、実力もある子がいたんです。ところが困窮家庭のため奨学金を申請するにも保証人がいなく、親の都合で申請ができなかったことがありました。その子の学ぶ権利は取り上げられ、進学する夢、望んでいた未来は中断せざるを得なくなりました。最近は奨学給付金もできて制度的には少しずつ改善されてはいますが、そういう負のサイクルを何度も何度も経験してきた子は、悲しいことですが学ぶ意欲、挑戦する気持ちが失われてしまいます。
―困っている生徒がモモさんに直接相談することはありましたか?
信頼関係があれば個別に悩みを打ち明けてくれる子はいました。グレーゾーンの子は見た目では判断ができず、よくよく話を聞いていくと基礎学力が極端に低かったり、耳から入ってくる情報に弱くコミュニケーションが苦手だったりすることが分かってきます。進路支援時もそこを見落としてしまうと企業に就職してからトラブルになるんです。発達障害の診断があれば専用手帳が得られ、一般入社よりも手厚くケアされることがあります。ほかにもデートDVやLGBTQなど恋愛や性に関する相談もありました。
―話を聞いていると権利条約がほごにされている実態が浮かび上がります。
自分が親になって、大人も子どもも一人の人間、つまり「命の価値は同じ」ということを意識するようになりました。年齢が上で経験もあるから、ついアドバイスという名の押し付けをしたり、彼らと真剣に向き合わなかったりしてしまうんですよね。でもそれは子どもの権利を無視することにつながります。実は今、教職を離れてママをサポートする仕事をしています。ママの笑顔が増えたら家庭が明るくなり、それは必ず子どもにいい影響を与えます。大人の日常が笑顔になれば自分を認めることができ、子どもを守ることに意識が向くと思います。「自己肯定感」が負の連鎖を断つキーになるのではないでしょうか。
★子どもの権利を考えるオススメ本
『あっ!そうなんだ! 性と生』
編著:浅井春夫・安達倭雅子ほか
出版社:エイデル研究所
イヤなことはしない・させない。人権尊重の観点から体を科学的に知り「自分も他人も大切な存在」ということが学べる性教育の絵本。
(えくぼママライター やけなみわ)
☆ プロフィル ☆
やけなみわ
神奈川県出身の二児の母。元編集者・ライター。現在は小学校のPTA活動を中心に、子ども食堂のボランティア、平和・環境活動、親子英語クラブの運営に携わる。趣味は観劇。旅行。スキューバーダイビング
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