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クレーマーではなくクリエーターに 乗車拒否騒動から1カ月 100cmの視界から―あまはいくまはい―(96)


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

車いすの乗車拒否に私が声を上げた理由 100cmの視界から―あまはいくまはい―(95)
https://ryukyushimpo.jp/style/article/entry-1308128.html

5月3日は憲法記念日。最近の私は、憲法・法律を生活の中でどうやって生かしていくかを考えています。なぜかというと前回も書いたのですが、先月、神奈川県のJR小田原駅から静岡県の来宮駅に行く際、来宮駅には階段しかないため、車いすの私は駅員から「案内できない」と乗車を拒否され、駅員さんと交渉を重ねました。それをブログで書いたところ炎上し、一カ月たった今でも誹謗(ひぼう)中傷は続いています。

障害者差別解消法という法律があり、企業は車いすの人も他の人と同じように駅が利用できるよう努力する義務があります。この問題を取り上げた新聞記事や専門家の話では、障害者差別解消法に触れ、これからのJRの改善を求めるだけでなく、増える無人駅の対応を考えるなど、いろいろな人が生きやすい社会を目指す内容のものばかりでした。

しかしSNSでの批判、誹謗(ひぼう)中傷はやみません。「車いすだから駅に事前連絡をするべき」「駅員さんがかわいそう」「感謝をするべき」「ブログに書いたりメディアに連絡したりするのはひどすぎる」などです。その根底には、障がいのある人が我慢するのは仕方がない、マイノリティーばかりに合わせるとマジョリティーがかわいそう、マイノリティーの声の上げ方、生活の仕方は控えめでなければいけないという考えがあります。

あまりにも多くの人がそう思っていることを知り、本当にショックでした。障がいのある人の生活について想像しにくいとは思いますが、丁寧な説明を何度も求められ、それを拒むと批判されるのはきついです。そして声の上げ方を批判するのも、トーンポリシングという差別の一つの形です。

コロナ対策はまだまだ続きますが、一人一人が安心して過ごせますように

今回の問題はいろいろな社会問題がつながっていると気付きました。今、日本の4割以上の駅は駅員がいない無人駅です。サポートが必要な障がい者や高齢者などが困っています。企業として障がい者への対応を考えていく必要があります。SNSの誹謗(ひぼう)中傷で自殺に追い込まれる人もいる今、それを取り締まる法律も必要でしょう。

声を上げるのはクレーマーではなく、クリエーターです。困った時に諦めるのではなく、声にして、人とつながり、解決していきましょう。大変なこともあるけれど、私は声を上げるあなたの味方です。

(次回は5月18日掲載)

伊是名夏子

いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。