過激なYouTube動画が生まれる背景とは モバプリの知っ得![143]


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沖縄県内在住とみられる男性YouTuberが猫を虐待する動画をYouTubeやTwitterにアップし、批判が集まっています。警察に通報した方もいて、動物愛護団体も動いています。動画には沖縄の風景がたくさん映っており「身近に動物虐待する人がいるのか」と怖くなりました。過激な言動で批判されるYouTuberは後を絶ちません。2018年にはアメリカの人気YouTuberが富士の樹海で自殺した遺体を撮影・公開し、批判されました。

「過激な言動」に振り回されない。 モバプリの知っ得![39]
https://ryukyushimpo.jp/style/article/entry-654815.html

今月、メンタリストを名乗るDaiGo氏がYouTubeの配信内で、ホームレス状態にある人たちについて「自分にとって必要のない命は僕にとって軽い、ホームレスの命はどうでもいい」などと発言し批判が殺到しました。YouTubeやライブ配信は、テレビ番組などと違い少人数で作って視聴者に届けることができます。手軽で誰でも発信できる一方、さまざまな人のチェックが入らず過激になりがちです。多様な意見が聞けたりポジティブな面もありますが、ネガティブな面としてはこういった過激な言動を行う方も出てきます。

 

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

こうした動画が生まれる背景には、「エコーチェンバー現象」が深く関係しています。狭い部屋の中で音が反響する様子になぞらえ、ネットの狭いコミュニティで言動が過激化する様子を表しています。似た考えの人たちで集まり同じ意見を出していると、それが当たり前のように感じ、だんだん激しくなる様子です。

例えば、ゲーム好きの人だけをフォローすると、あたかも人気ゲームを皆がプレーしていると勘違いしてしまいます。ゲームであれば趣味の範囲内ですが、似たような政治的な意見をフォローすると、自分のタイムラインが特定の候補者の応援で埋まり、開票で負けても、不正選挙論を振りかざす場合があります。

また動画の「配信」というのが重要な役割を担っています。ファンと交流をしながらコミュニケーションを取るという行為は、エコーチェンバー現象と相性がいいのです。「配信者が言っていることは正しい!」といった形で、居心地の良い空間が生まれ、より過激度も加速していくのです。

フェイクニュースや陰謀論、過激な差別主義者も問題になっていますが、その根っこにもこの現象があります。過激な動画の問題点を考え、時に批判すると同時に「自分が発信する時に過激にならないようにするにはどうすればいいか」と考えることも大事です。

※1 アメリカの人気YouTuberへの批判…2018年1月に当連載にて解説しています。
https://ryukyushimpo.jp/style/article/entry-654815.html

※2 エコーチェンバー現象…SNSでは、自分と共通の趣味を持つ人、似た考え、同じような属性(性別や年代、職業など)の人をフォローして交流しがちです。例えば、ゲーム好きの人だけをフォローすると、人気ゲーム機の発売日にはゲーム機の購入報告の投稿が大量に出てきます。それを見て「みんな買っている」と思ってしまいますが、実際ゲーム機を買っている人は全ての人口の中ではわずかだったりします。こうして、実態と感覚がかけ離れていき、だんだんと過激になっていくのです。

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」でも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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