木工制作ユニットが織りなす技 温かさ伝えるものづくり


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使うほど大好きになる、家具や器あります
平と米の制作所=平米

「平と米の制作所=平米」の平安山なほみさん(左)と米須美紀さん。うるま市石川山城を拠点に活動する木工制作のユニットだ。器やランプシェードなど製品を並べて撮影に応じてくれた 写真・村山望

平と米の制作所=平米」は、平安山なほみさんと米須美紀さんが立ち上げた木工制作のユニットだ。ユニット名の由来は二人の苗字の頭文字から。「使いやすく美しい そいとげたい家具や器」をコンセプトに、日夜ものづくりに励んでいる。うるま市石川山城にある工房を訪れ、ユニット結成のいきさつや、材料へのこだわりなどについて聞いた。

沖縄らしいやちむんの絵付けを木器に落とし込んだ「やむちんシリーズ」に、ホーロー食器を模した「ロウホウシリーズ」…。

手作業で削り出された器たちには、温かみとちょっとしたユーモアが込められている。器を手にしていると、作り手である二人が楽しそうに作業する姿が目に浮かんでくるようだ。

器の絵付けは一つ一つ手作業。やちむん風のデザインを木工に採用した「やむちんシリーズ」はクラシカルな色合い、図柄に(提供写真)

平米誕生まで

平米のはじまりは2017年。南風原町にある県工芸振興センターに同期の研修生として、平安山さんと米須さんが参加したことがきっかけだ。

米須さんは大学進学とともに福岡県に引っ越し、卒業後も同県内に就職、20年近く沖縄から離れていた。一方の平安山さんは、東京出身で大学進学を機に祖父の出身地である沖縄へ移り住む。彫刻を専門としながらも卒業後はいくつかの職業を経験していた。それまで別々の道を歩んでいた二人は、ほぼ同時期に「木工や家具作りがしたい」という思いを強くしていたようだ。人生の転機として参加したのが工芸振興センターの研修だった。

「出会って間もないのに(平安山さんは)私の作ってるものにダメ出ししてくるんですよ!(笑)。あんまり壁がないと感じました」

当時のことをそう振り返る米須さん。お互いの考えをオープンに話し合えたことが決め手となり、ユニット結成を提案したそうだ。

製材作業をする米須さん(手前)と平安山さん

ユニットを組んで木工作家をすることのメリットは多い。力仕事は協力してこなせ、開業に際しては資金面のハードルも下がる。何より、孤独に作業しなくてもいい、というのが二人にとっては大きかった。また米須さんの親戚である山城新一さん、郁子さん夫妻が所有していた木工所を作業場として提供してくれたことも強力な後押しとなった。

県産木にこだわり

一年に一度新作を制作する「テレフォンチェア」。もとは固定電話との使用を想定し作られていた家具だが、現代の生活スタイルにもマッチするのだとか(提供写真)

「リュウキュウマツは経年変化で黄金色に近い色味に」「ガジュマルはスポルテッドという個性的な木目が出ます」「イタジイにはまれに鮮やかな黄色が出るんですよ」

製品に使用する木材について尋ねると、平安山さんが目を輝かせながら説明してくれた。木材を選び、一本一本の個性を踏まえて何を作るのか思案する。これが二人にとって楽しい時間なのだとか。

なるべく県産の木材を使うことにもこだわっており、先に挙げた木の他、クスノキ、タブノキ、センダンなどを用いている。買い付けた木材は大事に使い、できる限り無駄にしない、ということにも気を付けている。
今月はうるま市の特産品「照間ビーグ」(ビーグ=い草)を使用したスツールも発表予定だ。椅子本体はリュウキュウマツ、座面部分はビーグの縄を編んで整形されている。ビーグを撚(よ)り縄にする工程も二人が手がけた力作。座り心地も良く、設置すれば「畳間のない家でもい草の香りが楽しめる」という。

うるま市特産の「照間ビーグ」を使用したスツール。ビーグを編んだ座面は「座ったら包み込まれる感じ」と平安山さん

現在は器が主力製品となっているが、今後は家具作りもアピールしていきたいという二人。家具類はオーダーメードでの制作も受付け中だ。

平米の工房からは、いつまでも愛用したくなるような一品が今日も生み出されている。

(津波典泰)


製品に刻印されるロゴマーク

平と米の制作所=平米

沖縄県うるま市石川山城192

ホームページ https://www.heibeiworks.com/

 

〈商品取り扱い店舗〉

Proots

浦添市港川2-16-7 TEL 098-955-9887

ゆいまーる沖縄

南風原町宮平652 TEL 098-882-6995

※この他取り扱い店舗は平米HPをご確認ください
 

(2022年3月3日付 週刊レキオ掲載)