銃乱射事件とヘイトクライム モバプリの知っ得[181]


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この一ヶ月間、アメリカで銃乱射事件が多発しています。先月14日にはニューヨークのスーパー、24日にはテキサス州の小学校、今月1日はオクラホマ州の病院で、4日にはフィラデルフィアの繁華街で銃撃事件が発生 【※1】しました。世界的にも批判の声が上がり、問題意識が高まっています。

「銃乱射事件」と考えると、日本ではあまり起こらない、どこか遠い場所の話のように感じるかもしれません。しかし「ヘイトクライム(憎悪犯罪)」と視点を変えるとどうでしょうか。

例えば、バファローの乱射事件では、容疑者は黒人が多く住む地域を狙い、撃たれた13人のうち11人が黒人でした。さらに容疑者がネット上残したと見られる長文な過激文書では、自らを「白人至上主義者」だと記しています。少なくともバファローの事件は「銃乱射事件」かつ「ヘイトクライム」であり、ヘイトクライムは残念なことに日本でも何度も発生している 【※2】のが現実です。

昨年、日本でも京都府宇治市のウトロ地区であった放火事件。朝鮮半島出身者とその子孫が多く住むウトロ地区へ放火したとして逮捕・起訴された被告の男は韓国が嫌いだなどと韓国に対する悪感情があったといいます。

https://ryukyushimpo.jp/style/article/entry-1512437.html
ヤフコメとヘイトクライム モバプリの知っ得[177]
 

その情報源にニュースサイトのYahoo!ニュースに誰もが書き込めるコメント欄の存在を挙げていて、「ヤフコメ民(Yahoo!ニュースのコメント欄によくいる人)をヒートアップさせたかった」と事件の狙いを説明していました。銃を使うのか、放火するのかの違いがあるだけで、「遠い国の話」ではなくて、ヘイトクライムは身近にあることなのです。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

ヘイトクライムは突然発生するわけではなく、その前にヘイトスピーチがあります。特定の民族や国籍、あるいは外国にルーツがある人たちを一括りにし、「国へ帰れ」「◯◯人を叩き出せ」、さらには「◯◯人を殺せ」と差別的な言動をヘイトスピーチと呼びます。

残念なことに、こうした言葉も日本でも多く飛び交っており、ネットへの書き込みも目立ちます。

ネットの中では自分の考えと近い考えの人たちだけと交流したり、特定の言葉を検索したりしていると、嗜好の傾向に従ってカスタマイズされて、似たような意見やコメントばかりが流れてくる「エコーチェンバー」や「フィルターバブル」と呼ばれる現象に巻き込まれてしまいます。

ニュースもスマホだけを見て受け取っていると、過激なものだけだったり、特定の人を憎むようになったり、さらには人を叩くためなら不確かな情報でもいいんだ―となってフェイク(偽)ニュースや陰謀論に染まっていってしまうことになりかねません。

遠くに起きたように感じる事件も、要素を一つ一つ分けて考えると私たちの身近な話に繋がっていきます。ヘイトスピーチをどう止めていくかが、今後の世界・SNS企業の課題です。私たちも日常の書き込みなどが積み重なって、偏見や憎悪が増産されて、ヘイトクライムやジェノサイドにもつながっていくおそれがあります。遠い国の話にしないで、自分にも関係するかもしれないと、あらためて考え直すことが大切ですね。

~ 解説 ~

※1 銃撃事件が発生 … バスケットチーム「ゴールデンステート・ウォーリアーズ」のスティーブ・カーヘッドコーチは、NBA優勝決定戦プレイオフ前の会見で「今日はバスケの話はしない」「(続く銃乱射事件に対して)もううんざりだ!」と激怒し、その動画は日本でも話題になりました。昔からアメリカでは銃火器を使った犯罪が社会問題になっておりますが、それでもここ一ヶ月で多く続いていることで、著名人も声をあげることとなりました。

※2 ヘイトクライムは残念なことに日本でも何度も発生している … 昨年8月、在日コリアンが多く住む京都府宇治市のウトロ地区で放火事件が発生しました。逮捕された容疑者は、差別感情が理由で、このヘイトクライムを起こしたと述べています。

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 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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