今月1日に施行されたある法律の改正により、ネット上での「誹謗中傷」投稿を、誰が書いたのか特定しやすくなりました。従来は特定作業のハードルが高く、傷つけられていても多くの方が泣き寝入りをしていました。今回の法改正で、ネットの過激な書き込みにブレーキはかかるでしょうか。
「特定」のための裁判が1回に
改正された法律は「プロバイダー責任制限法」、略して「プロ責法」などと呼ばれることもあります。
これまでは誹謗中傷で傷ついても、相手が「匿名」の場合は裁判で訴えることができません。まずは書き込んだ人を「特定」しなければいけないのです。
この誹謗中傷をおこなった「匿名」ユーザーを特定するためには、これまで2度裁判を行う必要がありました。特定された上でさらに損害賠償請求を行えば、合計3度の裁判が必要になるということです。
時間もお金もかかりますし、何よりも精神をすり減らします。そのため、多く人が結局アクションを起こすことができず、「見なかったことにする」「忘れるように努力する」など泣き寝入りを選んでいました。
10月1日からのプロ責法改正では、最初の個人を特定するための裁判が「1回」に短縮されました。これまでよりもプロセスが簡易化するため、匿名ユーザーの特定のハードルが少しだけ下がっています。
誹謗中傷は知り合いが行っていた
先月、SNS上での誹謗中傷で悩んでいたプロ野球選手のパートナーの女性が、裁判で匿名ユーザーを「特定」すると…なんと同じプロ野球チームの選手のパートナーであることが発覚したと週刊誌で報じられました。
全く知らない人ではなく、知り合いが匿名アカウントで誹謗中傷を行っていた…本人はバレないと思っていたのかもしれませんが、発覚したことでチーム全体にも悪い影響が出たと思います。職場、学校…近いコミュニティーや関係性の中でこうした事件が発生すると、誹謗中傷した人は居場所がなくなるでしょう。
この件は「法改正前」の話なので、今後はこうした話が各所から出てくるかもしれません。
「批判」と「誹謗中傷」の境界線
改めて考えたいのが、批判と誹謗中傷の違いです。
批判は、意見や考えなどをブラッシュアップさせるために必要な要素です。当然、違法ではないですし言論として認められるものです。
一方、誹謗中傷は、根拠を示さず人格を貶(おとし)める類のものです。
代表的なものは「バカ」「死ね」「クズ」「消えろ」などでしょう。
おそらく多くの方は、立ち止まって考えると「批判」と「誹謗中傷」の違いをイメージできるでしょうし、「誹謗中傷」がダメであることは明解でしょう。
しかし、「みんなが言ってるから」「批判が強くなって誹謗中傷になっていった」など、空気に流されて一線を越える人もたくさんいます。
特にSNSでは似た意見の人が集まりやすいため、感覚が麻痺して言葉が強くなることも頻繁にあります。
みなさんが見ている、交流しているSNSユーザーの言葉使いは大丈夫でしょうか。誹謗中傷をおこなっていないでしょうか。自分もそれらに引っ張られて感覚が麻痺していないでしょうか。
法改正のタイミングで、改めて振り返ってみてもいいのではないでしょうか。
琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」でも同じテーマを子ども向けに書いています。
親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。
【プロフィル】
モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。