今年の漢字 モバプリの知っ得[207]


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

日本漢字能力検定協会は12日、全国223,768票の応募から、今年の社会を表す漢字1位を「戦」と発表しました。毎年これをみて「1年が終わるなぁ」と風物詩のように感じる企画です。

「戦」が選ばれた背景としては、北京冬季五輪やサッカーW杯のスポーツ大会における熱「戦」・挑「戦」と合わせて、ロシアがウクライナを侵攻した「戦」争を連想して投票した人も多いことでしょう。遠い国で戦争が起きたことによって、原油価格が上がり、それに連動してさまざまな商品の価格が上がるなどお金に関する不安も広がりました。家計とのやりくりという「戦」いも生まれ、世の中が地続きでつながっていて、戦争も私たちの生活に影響するということをまじまじと感じる1年だったのではないでしょうか。

今年2月に発生したウクライナ侵攻では、そのリアルな様子がSNSや動画投稿サイトにたびたびアップされてました。意図せずにそうした映像を見てしまってショックを受けた人もいるでしょう。さらに、戦争で世界からの評判を下げないために有利な情報を発信する「プロパガンダ」もSNSを通じて行われていました。日本語でも情報が発信され、私たちにも届いていたかもしれません。

プロパガンダは「戦争をすること」が正当化されるため、争いが長期化・拡大する事にも繋がります。SNSの世論が力を持っている時代になり、戦争を考える権力者はSNSでのプロパガンダを仕掛けるでしょう。来年以降も、さまざまな国や地域で戦争を美化・正当化する言葉が広がらないか注意が必要です。日本国内においても、今月9日、防衛省が人工知能(AI)技術を使い、SNSで国内世論を誘導する工作の研究に着手したと報じられました。
〈防衛省、世論工作の研究に着手 AI活用、SNSで誘導〉

防衛問題で影響力がありそうなインフルエンサーが、無意識のうちに防衛省に有利な情報を発信するように仕向け、SNSに意図的にトレンドを作り出し爆発的に情報が広がるようにするという動きです。

岸田文雄首相はこうした報道を「事実誤認」と否定しておりますが、その後に行われた浜田靖一防衛大臣の記者会見での記者とのやりとりを見るにしっかりと否定しきれていません。 事実はまだ明らかになっていませんが、政府がそのように動いている可能性を考慮してわたしたちも対応した方がいいかもしれません。「プロパガンダ」は外国が自国を有利にするために仕向けるほか、国家が国民を煽ることにも利用されます。だからこそ、情報を冷静に見極めることが大事になります。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

今年の10月には、アメリカの実業家イーロン・マスク氏が大手SNSのTwitterを買収しました。マスク氏は「Twitterに言論の自由を取り戻す」と訴え、改革を行なっています。その際、煽って暴力行為を発生させたとしてTwitterアカウントが永久凍結となっていたドナルド・トランプ前アメリカ大統領のアカウントを復活させたのです。

一方で、自身のプライベートジェットを追跡するアカウントを凍結したことも明らかになり、都合のいいようにアカウントを凍結させたり解除させたりしているという疑念を持たれています。

SNS運営企業は、プロパガンダを防ぎ、情報の取り扱いに真摯に対応しないといけません。しかし、マスク氏の行動はその部分がブレており、Twitterで「言論の自由」がどう動くのか皆目検討がつきません。

言論の自由はとても大事な私たちの権利で、皆が思っていること・感じていることを自由に発信できることはすばらしいことです。しかしながら、差別やプロパガンダ、暴力をあおる言葉が良しとされて広がっていくと、結局は自由にものが言えない社会にならないでしょうか。SNSサービスは多くの課題を抱えたまま、2023年へと向かっています。私たちも自分の使い方や発信する言葉を、しっかりと考えなければなりません。

 

~ 【関連記事】 ~

※ ショックを受けた人もいるのではないでしょうか

SNSとの適切な距離感 モバイルプリンスの知っとくto得トーク[249] https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1481362.html

※ Twitterを買収

変わるTwitter モバイルプリンスの知っとくto得トーク[283] https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1615437.html

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」でも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

http://smartphoneokoku.net/