沖縄の山々の魅力広めたい 沖縄山岳会


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亜熱帯の自然との触れ合い楽しむ

登山に参加した沖縄山岳会のメンバー。この日は植物の観察をしながらゆっくりと山の中を歩いた。左から3番目が田場典淳さん=国頭村、1月26日 写真・村山望

沖縄は海ばかりが注目されがちだが、亜熱帯の森に覆われた山も忘れてはならない。標高が低く、登山道が整備されている場所もあり、豊かな自然を満喫しながら気軽に登山ができるのが魅力だ。登山愛好家たちでつくる「沖縄山岳会」は、沖縄本島を拠点に登山や沢登りなどを実施。同会を設立した田場典淳(てんじゅん)さん(65)は、登山人口の少ない沖縄で登山を普及・振興させていきたいという。

1981年に結成された「沖縄山岳会」。県内で最大規模の山岳会で、50代を中心に中学生から70代後半まで約120人が在籍している。「山岳会に入って登山を始める人がほとんど。本土から来た登山経験者も入会している」と初代会長の田場さんは話す。標高が低い沖縄の山は高山病などの心配もなく、登山道が整備されていれば初めての人でもトライしやすいという。

秋から春は山へ、暑い夏には川へ向かい沢登りを楽しむ。「沖縄には沖縄ならではの山の楽しさがある。夏場の沢歩きも水の中をジャブジャブと歩いて楽しい」と笑顔を見せる。その他にも草木観察会やクライミング、キャンプ、清掃登山、県外での本格登山なども実施。講習会などもあり、登山に必要な知識や技術も教えている。

沖縄でも山登りができる

夏に沢登りを体験する会員たち。川に漬かって歩みを進める=2020年(沖縄山岳会提供)

「『沖縄に登る山はあるの?』とよく質問される」と笑う田場さん。「北部の山は平均標高約400メートル。亜熱帯の植物があり、きれいな花もたくさん咲いているのが特徴」だという。本土の人たちは、県外の山岳地帯ではなかなか見られないやんばる独特の動植物や景色を見て喜ぶという。山岳会副会長の細川浩(ゆたか)さんは「沖縄の山はもともと登る人が少ないため、本土の山に比べてすいている。だから山が荒れずに自然が残っている」と続ける。

田場さんの登山歴は40年以上。県外で過ごした学生・社会人時代に登山を覚え、とりこになった。帰沖した当時、沖縄の登山情報はなかった。「沖縄で登山ができるか分からず、(登山を中心にアウトドア活動を行う)琉球大学のワンダーフォーゲル部と一緒に活動を始め、山の情報を教えてもらった」。その後、登山やイベントなどで知り合った人たちに呼びかけるなどしてメンバーを集め、山岳会を設立。以来、県内外で登山を続けてきた。

「山の日」全国大会の会場に

山歩きを楽しむ参加者たち=国頭村

良く晴れた1月下旬、国頭村内で実施された登山に同行した。植物観察会を兼ねたスローペースの登山だ。参加者16人と共にベテラン会員のリーダーの案内で山に入った。やんばるの山地の森の中は、上空を覆う木々が直射日光を遮ってくれる。沖縄の植物の専門家による解説を聞いたり、時折眼下に見える海の景色を楽しんだりと、ここでしか味わえない体験に満ちた山登りを満喫した。

登山の魅力は登り終わった時の達成感よりも行程だという田場さん。「山頂に行くまでのアプローチが好き。景色はきれいだし、帰ってきてからまた行きたいと思わせてくれる」と話す。

沖縄山岳会創立40周年記念で、北アルプス・穂高連峰の「涸沢(からさわ)カール(標高2300メートル)」に登った会員ら=長野県松本市、2022年10月(沖縄山岳会提供)

今年8月には、「山の日」(8月11日)を記念する第7回「山の日」全国大会が初めて沖縄で開催される。会場は世界自然遺産にも登録された国頭村、大宜味村、東村と西表島。3月25日に行われる奥武山公園のキックオフイベントを皮切りに各種イベントを展開し、全国大会をPRしていく。沖縄山岳会もクライミング体験イベントを実施するという。「できれば地元の人に多く参加してもらいたい」と期待する。

「目標は登山の普及。沖縄でも登山ができるというのを分かってもらいたい」と田場さんは話す。貴重な動植物の宝庫の山々や世界遺産にも認められた地域の素晴らしさと登山の魅力を広めていきたいと願っている。

(坂本永通子)


沖縄山岳会

TEL 090-7923-9110〔田場〕
https://sangaku-sc.spoyell.okinawa/
(沖縄山岳会が加盟する「沖縄県山岳・スポーツクライミング連盟」HP内にイベント情報などあり)

第7回「山の日」全国大会HP
https://www.okinawamt.com/

(2023年2月16日付 週刊レキオ掲載)